20世紀の木管五重奏曲 *****(特薦)
今日はオーケストレーションの授業で、フランセの木管五重奏曲を分析しようと思い、昨日から少しずつ準備をしていたのだが、録音はと思い探していると10年前に買ったアンサンブル・ウィーン=ベルリンの録音が出てきて、少し聞いてみようと聞き始めたのが運の尽き。全部聞いてしまった。なんて面白いんだろう!
まず、フランセの木管五重奏曲は実は難曲としても知られる作品で、奏者に名人級をそろえないと話にならない曲なのだが、これは全くアンサンブル・ウィーン=ベルリンの独壇場だった。第一楽章の主部でのホルンのゲシュトップでのフラッター・タンギングで半音階で下っていくところなど、ギュンター・ヘーグナーは実に上手いし、その他でもホルン協奏曲じゃないだから!っていうクレームが付きそうな場面には事欠かない。それがどこも完璧なのだ。第二楽章のスケルツァンドな表現もさることながら、第三楽章でのヴォルフガング・シュルツのフルートの鮮やかなこと!!変奏曲形式に乗っ取って様々な木管の技法のオンパレードだ。だからと言って、現代的な奏法などをやっているのではない。エスプリあふれるフランセは決して無理なことはせず、調性を逸脱するようなことはなく、古典的な枠組みの中で、ドビュッシーなどの伝統を守り続ける。
終楽章の各奏者に与えられた難技巧がサラリとやられているところにこの演奏の奥深さが表れている。ああ素晴らしい体験だった。
続くバーバーの「夏の音楽」は戦後のバーバーの作品。どこか気だるい雰囲気ではじまるこのバーバー中期の作品は、いくつかの録音がすでにあり、私はベルゲン木管五重奏団による録音も持っている。(BIS/BIS-CD-291)
しかし、このアンサンブル・ウィーン=ベルリンもまた素晴らしい録音で、ベルゲン木管五重奏団を大きく凌駕している。冒頭のフルートとクラリネット、それにつづくファゴットのパッセージだけでもその音楽的能力の高さははっきりしている。
ベリオの作品番号獣番(オーパス・ナンバー・ズー)では、朗唱がついて納屋のダンス、子鹿、年老いたネズミ、雄ネコと四楽章が語られていく面白い作品。1951年の作品で、ベリオの初期の作品。
オーストリアの作曲家エーダーの木管五重奏曲 第3番「遭遇 "Begegnung"」は1989年に書かれたもので、冒頭から創意に溢れた曲。調性を残した書法によるが、端々に斬新なサウンドへの欲求が実現されている。全四楽章。アンサンブル・ウィーン=ベルリンという強力な演奏者を得て、私はこの曲が興味深い作品であることがようやくわかった。
第一楽章はホルンのロマン溢れる序奏を持つ拡大されたロンド形式による作品。ソリスティックな魅力を引き出して、パートとパートが遭遇(なんだか広瀬量平氏の曲名を思い出すなぁ・・・)する。
第二楽章は緩徐楽章。メロディー・ポリフォニーと題されている。長いリズムから次第に細かくなっていく、リズミックな動感が生まれ、それが発展していくが、やがて静的な世界に収束していく。
第三楽章はメロディー・コラールと題されていて、なんだか緩徐楽章が続いた感もなきにしもあらず。
で、終楽章は無窮動の活発な動きを表現しているようだが、冒頭、第一楽章のホルンの序奏の節がフルートで、スタッカートで出てきて、やがてオーボエに、そしてフルートが絡み、やがて無窮動風に発展していく。この楽章が一番面白かった。
木管らしい表現でありながら、そこかしこに面白い音の探求があるが、ただ現代的な意味でのそれではなく、かなり古典的・伝統的ではある。
その意味で、リゲティの6つのパガテルはエーダーには悪いが格が違うという感じ。この曲は数多くの録音が出ている、現代の木管五重奏の古典となっているもの。1953年というからリゲティがまだ亡命する前の曲で、民族的な素材による作品だ。バルトークやコダーイの影響はまだ顕著に残っているが、この弾けるような個性の横溢はどうだろう。
いくつかの録音があるが、今のところ、この演奏が最も良い。

10年前の発売なので、もう手に入らないのではと思って「20世紀の木管五重奏曲」で検索をかけたらアマゾンに中古が出品されていた。よろしければどうぞ!良い演奏ですよ!もちろん*****(特薦)です。さて、授業の準備をするか・・・。

20世紀の木管五重奏曲/SONY-Classical/SRCR 8957
by Schweizer_Musik | 2005-06-22 05:09 | CD試聴記
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