グローフェ/「グランド・キャニオン」他ナクソス ***(注目)
学校に出かける前に、ちょっと一枚・・・。
グローフェの「グランド・キャニオン」を含むナクソス盤を聞いていた。
この曲は、昔々、アーサー・フィードラー指揮で聞き込んだ曲である。あれは良い演奏だった。その後、CD時代に入るとドラティの名盤が出てきて、もう決定盤はこれだと決め込んでいた。あの演奏も良いものだった。他にもLP時代に聞いて良い印象を持っているのはバーンスタインとニューヨーク・フィルのエネルギッシュな演奏とオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の演奏。そしてちょっと古いレナード・スラトキンとハリウッド・ボウルだったと思うけれどこれらは良かった。
また、作曲者の自作自演というのも出ていたが、これは作曲者の名誉になるものではなかった。彼は指揮者ではないようだ。
で、このナクソス盤はそれらの演奏に比べても存在感を主張できるほどの演奏かどうかという点であるが、大体において大人しい演奏で、それほどでもないというのが私の印象である。なんとかまとまった演奏で、破綻はないが、もう少し羽目を外した面白さや、ドラティ盤やオーマンディ盤のようなハンガリー勢の精緻極まる音楽的なアンサンブルを聴かせるならわかるが、そこまでは遙かに至っていない。
ボーンマス交響楽団はこの曲を演奏するのには全く不足はなく、腕はたしかだ。それほど難しい曲ではないから当然と言えば当然なのだが。

私はこのCDを買った理由は「ミシシッピ組曲(音の旅)」が入っているからだ。
昔どこかのテレビ局でやっていたアメリカ大陸横断クイズのテーマに使われていた曲で、聞いたら「ああ、あの曲」と皆が思うはずのメロディーが出てくる。この曲は実はグローフェの出世作で、1926年の作。だから「グランド・キャニオン」の五年前の曲で作曲者34才の時の作品。第3曲の「懐かしきクレオールの時代」などはなかなかに美しく、心休まる響きに満ちている。
第2曲「ハックルベリー・フィン」の脳天気な音楽も愉しい。「グランド・キャニオン」で示された弦を分割してメロディーを分厚いハーモニーで飾り立てる方法は、その後のハリウッド・サウンドに大きな影響を与えたものだと私は思うが、この「ミシシッピ組曲(音の旅)」はもっと大人しいものであるが、「グランド・キャニオン」の原点になったことは間違いない。
第4曲の「マルディ・グラ(懺悔火曜日)」の中間部での弦のサウンドはまさに「グランド・キャニオン」の「日没」のシーンで聞かれたものの原点になっている。
しかし、この脳天気なペンタトニックはアメリカ人のスコットランドへの深層心理での郷愁の現れだと言えなくもない。
この作品を丁寧な演奏で聞かせるウィリアム・ストロンバークが指揮するボーンマス交響楽団は、大人しい演奏であるが故に、曲が持っていない品位を保っていて私は好きだ。
1961年、すでに70才を目前にしたグローフェが書いた組曲「ナイアガラ大瀑布」はもう彼の音楽が若い時代のような勢いを持っていないことを示している。
おどろおどろしい出だしから、確かに聞かせ上手なグローフェ節は健在ではあるが、メロディーが平凡で劇伴を劇無しで延々と聞かされている感じで、最後まで聞くのはちょっと辛かった。そう言えば、長年かかって?書き上げたピアノ協奏曲も結構冗長で、グランド・キャニオン以降の彼は、もう聞くべきものを書くことができなかったのかもと思ってしまった。(実際あの曲は、今時の学生でも書かないだろう)
というわけで、ミシシッピ組曲(音の旅)のみ推薦。あとの2曲はグランド・キャニオンが***の注目。組曲「ナイアガラ大瀑布」は**として、トータルでは***(注目)とすることにしよう。

NAXOS/8.559007
by Schweizer_Musik | 2005-06-29 08:47 | CD試聴記
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