ボリショイ劇場が改修工事
ボリショイ劇場が老朽化のために改修工事にはいるそうです。
モスクワのこの劇場のことは、あまり憶えていませんが、老朽化で3年間の閉館ということです。2008年には再開するとのことですから、その間はボリショイ劇場のオペラやバレエが世界中に引っ越し公演をしてまわるのではないでしょうか。
1856年に建てられてから、ロシア革命、そしてペレストロイカ、民主化という大きな時代のうねりを見続けた建物ですが、大きな改修工事も行われていなかったというのにも驚きます。
先日、6月30日に歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」とバレエ「白鳥の湖」でしばしのお別れ公演を行ったということです。

最近はゲルギレフの率いるキーロフ歌劇場などに押されて、低迷していたボリショイ劇場であったが、かつては世界屈指の名劇場でした。
私がこのモスクワに行ったのは1990年のことで、もう15年も前になります。実ははじめての海外旅行で、国名もまだロシアではなくソビエトという名がついていました。元首もゴルバチョフ書記長で、国が疲弊しきっていた時代でした。
そんなモスクワに行ったのは、私の友人がチャイコフスキー・コンクールに出るというので、その応援で行ったのです。
今にして思えば懐かしいのですが、当時は社会主義で外国人が旅行するには厳しい国でした。そんな中、モスクワ音楽院の学食で、一緒に行ったそのコンクールにエントリーしていたピアニストと二人、「これじゃ動物のエサだな」と笑いながら食べた昼食が、思い出されます。
音楽院のすぐそばに、ショスタコーヴィチやカバレフスキーが住んでいた音楽家のためのアパートがあり(したがってクレムリンからもすぐ!)、偶然出会った日本の審査員の無量塔蔵六氏にそのアパートの一階のレストランで食べさせていただいたことも思い出されます。
モスクワというと、こうしたことが走馬燈のように浮かんできます。季節もちょうど今頃でした。美しい町並みというよりも、共産主義政権が建てた、グロテスクな建造物ばかりが目に付いたモスクワで、チャイコフスキーの銅像がある門をくぐってはいるモスクワ音楽院や、ボリショイ劇場の優雅な眺めがとても人間的で、文化を感じさせたことも事実です。

ボリショイ劇場で音楽を聞いたわけではありませんが、モスクワと季節がぴったりと合わさって、こんなことを思った次第です。
by Schweizer_Musik | 2005-07-03 06:32 | 音楽時事
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