ストラヴィンスキーのペトルーシュカの「ロシアの踊り」のスコアを見ていて、この稀代の音楽家が、ロシアという故郷に徹底してこだわっていたように思えてならなくなった。曲がロシアというだけではない。ロシア人というのは土地との結びつきが異様に深いように思う。
「ロシアの踊り」はミクソリディアではじまりフリギアに転調して終止するテーマに、ドリアとリディアを行ったり来たりする展開がくっついてもう一度ミクソリディアのテーマに立ち戻る最初の部分。 中間部でイオニア、あるいはエオリア、もしくはドリアで展開し、またミクソリディアなどの最初の部分に立ち戻る、典型的な三部形式で作られている。ただ、最初の部分と中間部との対比は不明瞭で、どちらかと言えば、最初の素材を発展させて中間部となっているようだ。 音楽としては、おどろくほど単純な構造。それは民族的な素材と結びついて、強靱な生命力を獲得している。しかし、私たちがストラヴィンスキーに感じているのは土俗的な音楽の生命力でなく、研ぎ澄まされた感覚である。それはなによりも彼の並はずれたオーケストレーションによっている。またハーモナイズが独特で、彼独特のサウンドを獲得しながら、一つのメロディーに対して様々なハーモニーが当てはめられていることによる。 ペトルーシュカでは、ロシア五人組の音楽からそう遠い様式ではない。まだ五人組やグラズノフ、チャイコフスキーの様式をひきずっている。その影響は単純なものから、エンハーモニックな変化まで多種多様である。 次の部分などは、私にはポロディンなどのハーモニーを思い出させる部分である。ファゴットを二本、高音で和音を吹かせて、ホルンに属音の保続音をやらせ、その上で、クラリネットとコール・アングレ(ボロディンの「中央アジアの広原にて」でも「ダッタン人の踊り」でもコール・アングレがキーだった・・・)がメロディーを切断して掛け合うのだ。
by Schweizer_Musik
| 2005-07-23 21:43
| 授業のための覚え書き
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