サンモリッツ、セガンティーニ美術館
鉄道紀行がBSフジであり、見ているとチューリッヒからクール、サンモリッツ、ポスキアーヴォなどが紹介され、ベルリナ線と氷河急行、レイテッシュ鉄道からフルカ・オーバーアルプ鉄道などが紹介されていた。
なかなかコンパクトな紹介で、よく出来ていたが、先日、NHKの素晴らしい番組を見てしまったので、ちょっとダラダラと紹介しているという感じであった。
で、それならここに書くこともないのだが、中でサンモリッツとセガンティーニ美術館が紹介されていて、あまりに懐かしくてここの書きたくなってしまった。
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(セガンティーニ作泉と女)

セガンティーニという画家は、近代の美術史ではあまり触れられることなく、知る人ぞ知るという画家。サンモリッツのセガンティーニ美術館は、この地に長く住み、ここかせほど遠くない山小屋で亡くなった彼の最後の三部作を見せるために建てられた美術館であると言ってよいだろう。
このサンモリッツの美術館に展示されている絵は何枚かあるが、基本的に二階にあるセガンティーニの最後の作品である三部作を見るためにある美術館と言ってよいだろう。
「生成」「存在」「消滅」という三枚の絵は、未完成であるそうだが、私にはどこが未完成なのかよくわからない。エンガディンの山々の姿が描かれている。だから絵はがきのようなただ美しい絵というのとは違うのだ。
アルプスの魅力の一端に、一度でも触れた人ならば、彼が描く宗教的な深い感動を湛えたアルプスの風景に強く共感するに違いない。アルプスは自然の美しさとか壮大さとか感じる以上に、宗教的な何かを感じさせるものだ。
私は、始めてスイスに行った時に、ゴルナーグラートで泊まって、その宗教的な体験をした。もちろん、新興宗教のような話ではないし、何かの奇蹟が起こったとかそんなものではない。とてつもなく大きな世界の中で生きているという実感・・・。都会の雑踏などから隔絶した静けさが醸し出す饒舌・・・。

これに夢中になった音楽家は多い。ワルターやフルトヴェングラーもそうだ。シュトラウスやブラームスもそうだしワーグナーもアルプスが好きだった。
シューマンもベルナー・オーバーラントの素晴らしい風景に感嘆の声をあげた・・・。
セガンティーニの絵を見て、強く共感した作曲家としてはウェーベルンがあげられる。
彼が1905年に書いた弦楽四重奏はこのセガンティーニの絵にインスピレーションを得て書かれたものだ。

ベルニナ峠の厳しい風景などやフルカ峠など、想い出は尽きないが、この風景に心動かされない人がいようか・・・。
ちなみにワルターは毎年、このサンモリッツに近いシルス・マリアに避暑に来ていたそうだし、夏の音楽祭でハスキルなどが来るのを聞きに、文豪のヘッセが訪れたりしている。シルス・マリア(地上であんなに美しい村が存在すること自体が奇蹟ではないだろうか?)のヴァルトホテルがその定宿であったようだ。

偉大な音楽家たちが愛した村、風景、番組のサラサラとした紹介を見ながら、そうした背景にある世界に思いを馳せていたのだった。
ああ、また行きたい!!
by Schweizer_Musik | 2005-10-17 19:06 | 音楽時事
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