久しぶりにラ・ボエームを見た。
何年ぶりかでプッチーニの「ラ・ボエーム」を見ている。今から十年以上前だが、本当によく見たオペラだった。ビデオとレーザーディスクで持っていた。コヴェントガーデンの録画とメトの録画で、コヴェントガーデンの方はイレアナ・コトルバシュのミミがとても可愛かったし、メトの方のテレサ・ストラータスのミミは可憐で・・・。
青臭い恋愛劇のどこが面白いのかと言われそうだし、まだあれが良いという程度とはと馬鹿にされかねないような気になって、長く見ないでいたが、今日のクラシカ・ジャパンでやっているのはスカラ座の公演。
演出はメトと同じゼッフィレッリ。オーソドックスなもので、ロドルフォやマルチェルロの部屋も凝っているが、どうもメトの舞台をそりまま持ってきたみたいだ。装置までふくめてレンタルしたのだろうか?
ゼッフィレッリらしい照明がとても良い。メトの舞台でも感心したものだが、さすがだ。ろうそくの火が消えて真っ暗になった雰囲気がとてもよく出ていて、窓からの月明かりが印象的だ。これはメトの舞台よりもずっと印象深いものとなっている。
ミミはとても良い。「私の名はミミ」はドラマチックに歌われると返ってひいてしまう。お針子の身の上話なのだ。「雪解けの最初の太陽は私のもの」というあたりではちょっと張り過ぎている感じがある。もっと敬虔な祈りが込められていてしかるべきというのが私の意見だ。
クリスティーナ・ガジャルド=ドマスのミミは、美しい容姿もあり、拍手を受けていた。うーん、私はもう少し声の魅力に欠けるように思える。ロドルフォはマルセロ・アルヴァレス。大変気に入った。良い声をしている。ただちょっと太り気味。これは貧しい生活をしているボヘミアンのイメージというより、お金持ちのボンボンという感じでちょっと劇にリアリティが欠けるようだ。

第二幕の華やかな開始はさすがスカラ座!!ただ、人が多過ぎて何を見せたいのかわかりにくいのが難点だ。
ミミとのデートの場面はやはり金持ちのボンボンが若い女の人を連れ回しているイメージで、どうも舞台からリアリティが感じられない・・・。声は良いのだが・・・。パルピニョールの叫び声はほとんど聞こえない。舞台の場面転換に意味があるはずで、ちょっと今ひとつ。子役の「おもちゃがほしい」の声もボー読みという感じ。
ムゼッタはとても良い。メトの公演でレナータ・スコットのかなりうば桜となったムゼッタにちょっと興ざめだっただけに、ヘイ=キョン・ホンのムゼッタはそうした問題はない。ただ演技が固く、声がスコットのようにもう無理していないだけに聞きやすいが、声量と歌の芸ではスコットに遠く及ばない。ムゼッタがマルチェルロを再び誘惑する場面ももっと迫真の演技がほしいし、「マルチェルロ」とムゼッタが叫ぶ部分までの盛り上がりはもっと欲しい!!

第三幕はこの交響曲のようなオペラの緩徐楽章にあたる。アンフェールの門の場面では冬の暗い雰囲気がとてもよく出ていて、この演出に惹きつけられる。雪のつもる舞台はほんと、どうやって作ったのだろうと思うほどだ。オフ・ステージからのコーラス、ムゼッタの声、マルチェルロの声・・・そしてやがて恋人たちの別れが暗い冬景色の中に描かれていく。ロドルフォとミミの悲しい別れはいつ見ても泣ける。
「花の季節になったら別れよう」という幕切れの言葉は、第1幕のミミの歌への遠い返歌なのだと気付く。

第4幕は、第1幕と同じ舞台に、全く異なる状況が描かれるが、第1幕が夜であったのに対して、ここでは明るい昼間。本当にうまく出来た演出だ。構成も含めて一部の隙もない。音楽も台本も全て完璧だ。それにメロディーが美しく、ハーモニーもわかりやすいのだから、一般的な人気が出ないはずがない。
「みんな行ってしまったのね」とミミが歌った後のロドルフォはベッドに上がってまでミミを抱くことはなかろうにと思う。ちょっとやりすぎ・・・。絵が重なってしまいよろしくない。
みんなが帰ってきて、少し演出が落ち着く。
ロ短調の和音だったかでミミの死が示されるのだが、ちょっと重すぎる。もっとさりげない方がいいと思うのだが、これは日本人的発想かもしれない。
ここまでが第1幕から第3幕までの回想と再現、ここからがコーダとなる。マルチェルロたちがミミの死に気づき、やがてロドルフォの絶叫へと繋がるあたりは、やはり泣かせる。ただ今ひとつ深みに欠けるように思えるのは、指揮のブルーノ・バルトレッティの微温的な節回しのせいかも知れない。
久しぶりに2時間、集中してしまった。いやー、オペラって良いもんですね・・・。
by Schweizer_Musik | 2005-12-12 16:57 | 日々の出来事
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