シューリヒトのモーツァルト・ライブ *** (注目)
シューリヒトがシュトゥットガルト放送交響楽団を振ったライブ・シリーズをナクソス・ライブラリーで聞く。CD番号はCD93.152である。ヘンスラーから出ているものらしい。録音はかなり人工的なステレオ感を持たせた物で少々気持ちが悪い。私はモノラルにして聞いた。特にハフナーは非道い。素直にモノラルで出せばいい物をこんな風にするのはプロデューサーの見識を疑う。
ただ演奏は総じて直裁で歯切れの良さと力強さが持ち味のシューリヒトらしいものばかりで完成度は高い。特に彼が得意としていたハフナーは、ウィーン・フィルとの演奏もあるが完成度としてはシュトゥットガルト放送響の方が上だろう。アンサンブルは締まっているし、切れのよいカンタービレは大変魅力的。弦のブルトもかなり切りつめているようで、古楽器の演奏を先取りしているような感もある。
「プラハ」は私にはベルンハルト・パウムガルトナーの古い録音がやはり一番なのだが、このシューリヒト盤も魅力的だ。全く個性は異なる。おそらくベルンハルト・パウムガルトナーの反対をいけばこうなるのだろう。実に力強い「プラハ」交響曲である。第2楽章のカンタービレは正に聞き物であろう。
続く40番は多少問題がある。第1楽章の第1主題のアーティキュレーションが不明瞭でパリ・オペラ座管弦楽団を振ったものに比べるとかなり劣る。第2主題もリズム的にやや崩れていて、フレージングに多少私は異論がある。
第2楽章は美しいもので、少し速めのテンポを選んでいるが、時折大きくテンポを動かしていてそれがちょっと不自然だ。歌い回しも少し前のめりに入るところなど、いかにも恣意的に聞こえてしまう。私はもっと自然にやった方が良いと思うが・・・。
第3楽章以下は大変良い。直裁なシューリヒトの個性がここでは輝いている。終楽章などは滅多に聞けない力がある。ただ、私には大胆すぎるテンポ変化はちょっと戸惑うのでこの演奏だけは推薦できない。
しかし、このCDには大変なオマケがある。それは、エリーザベト・シュヴァルツコップが歌ったモーツァルトの「フィガロの結婚」の第二幕の伯爵夫人のカヴァティーナ「愛のいくばくかの慰めを」とフリッツ・ヴンダーリッヒが歌った「魔笛」の第1幕のタミーノのアリア「美しい絵姿」、そして私は残念ながら今まで知らなかったが見事なコロラトゥーラの技巧を披露しているプッツの歌ったコンサート・アリア「いいえ、いいえあなたには出来ませぬ」K419である。
どれもがとても素晴らしく、稀代の名歌手たちの声をたのしむことができる。ピッタリとつけるシューリヒトのタクトの見事さは言うまでもない!
録音に問題があるのと、40番は気に入らなかったので、***としたい。

Hansler_CD93.152
by Schweizer_Musik | 2006-01-05 09:39 | CD試聴記
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