ミケランジェリのリサイタル
BSの深夜番組で、ミケランジェリのリサイタルをやっていた。1981年、スイスのルガーノで撮影されたとのことだが、あのレコーディング以上に嫌っていたと伝えられる映像が残っていたとは知らなかった。音だけは、ずいぶん前にCDで出たので、私も持って聞いている。1980年代のミケランジェリとしては最高のものであろう。プログラムはシューベルトの第4番とされる1817年作曲のイ短調のソナタとブラームスと作品10の4つのバラードである。
シューベルトのピアノ・ソナタ第4番イ短調を聞きながら、昔、大阪のフェスティヴァル・ホールで全く身も心もとろけてしまうような感動をした時を思い出した。ピアノの音色にこれほど多彩な変化があり、ダイナミック・レンジの幅がこれほどにまで広く、そして音楽が立派で、決してルーティーンな惰性に陥らず、演奏できるというのは、もう奇蹟だ。
彼がシューベルトのこのソナタを偏愛したのは何故かわからない。変ロ長調の最後の名作だってあるのに残念である。しかし、そんな贅沢を言ってはならない。彼の奇蹟と言うべきタッチがテレビの画面に大きく映し出されるのを、私はもう心躍らせて見ていた。
ブラームスは、どれだけすごいといえばいいのだろう。正規録音も良かったが、これは神技である。そしてその奇蹟の瞬間を私は見ることができるのだ。こういう体験ができたことを感謝しなくてはならない。やっぱりBSの料金は払わなくてはいかんと思う。

ルガーノは、美しい町だ。フルトヴェングラーが度々訪れ、ワルター一家のお墓もここにある。文豪ヘッセもここに長く住み、お墓もワルターと同じ、聖アボンディオ教会の隣の墓地にある。
ルガーノ湖の美しさは言語を絶する。アルプスの南への「レモンの花咲く…」というミニヨンの歌にあるように南国への憧れは、アルプスの北に生まれた人々には大変強いものなのだろうと思う。
そのイタリアに生まれ、アルプスの麓の麗しの町、ルガーノで亡くなったミケランジェリは、南に面したどこかの明るい土地で眠っているのだ。
by Schweizer_Musik | 2006-02-18 09:09 | 日々の出来事
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