今時、全く流行らないことを考えてみた。CDはデータにして持って行けるので、ハード・ディスクの許す限り可能であろう。昔のようにLPだったら話はわかるが・・・。
しかし、今の自分が、厳選した十枚って一体何か? ふと考えると、これが意外と面白いのだ。潤沢に、ほぼ何でも聞ける環境に自分はいるが、そこからギリギリまでそぎ落として考えるというのは、今だからこそ面白そうに思い始めた。それで、十枚選んでみた。そうすると、あれほど好きな室内楽が入らないのだ・・・。そしてピアノ音楽も、歌曲も。以下、順位はないのでそのつもりで読んでほしい。 【BMG/BVCC-1036】 ・ハイドン/交響曲 第88番 ト長調「V字」Hob.I-88 フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団1960年2月6日録音 ・ハイドン/交響曲 第95番 ハ短調 Hob.I-95 (1791) ・ハイドン/交響曲 第101番 ニ長調「時計」Hob.I-101 (1793-94) フリッツ・ライナー指揮交響楽団1963年9月13,16日録音 この録音の素晴らしさは語り始めたらきりがない。95番と「時計」は空前絶後だ。88番はクラウスの録音に比べると今ひとつであるが、くっついてくるのでとりあえず・・・である。 【BIS/CD-1000〜1002】 ・バッハ/マタイ受難曲 BWV.244 (1728-29) 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン他 1999年3月神戸松蔭女学院大学録音 一年前ならば、リヒターの1958年の名盤をあげていただろうが、鈴木氏のバッハのカンタータ集を聞いていてもう彼ら以外のバッハは考えられなくなってしまった。ほとんど彼らの録音は持っているが、どれもが全く新しい!! 【ARTE NOVA/74321 87074 2】 ・ベートーヴェン/ミサ・ソレムニス ニ長調 Op.123 (1819-23) ディヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団,スイス室内合唱団他 2001年5月7-9日チューリッヒ・トーンハレ録音 これは迷った一枚(二枚組だけれど・・・)。実はハイティンク指揮の「田園」にしようかと随分迷ったのだが、ベートーヴェンをたった一枚ということになると「田園」では飽きてしまいそうだ。作曲者が「生涯最高の作」と考えていたこの曲は、ディヴィッド・ジンマンのようにサラリと入ってくる演奏で、何度も聞き返したいものだ。名匠ネフが鍛えた合唱団も素晴らしいし、ソリストたちも文句はない。 【DENON/COCY-78624】 ・武満 徹/服部隆之編曲/小さな空 (1961?)他 石川セリ(vo),他 1993年12月〜1995年9月日本コロンビア、東京スタジオ録音 私の好きな武満徹の音楽から何を選ぶべきか迷った。きっと生涯二度と彼の音楽が聴けないとしたら、ものすごく悲しいに違いない。たった一つというのは確かに酷だ。でも一番よく聞いたこのポピュラー・ソング集なら、彼の優しい言葉に慰められることは間違いない。 アレンジされ、石川セリ(井上陽水の奥様)が個性的な歌い回しで表現しても、どのフレーズからも武満徹の「うた」が聞こえてくる。これはいかに彼の作った音楽が他に類のないものだったかの証である。こんなことってバッハ以外になかったことだ!! 寺山修司や谷川俊太郎の詩に加えて、文才にも恵まれていた武満徹自身の詩につけた「小さな空」などの歌が心にしみる。 【EMI/7243 5 86477 2 3】 ・オネゲル/交響的運動 第1番「機関車パシフィック231」(1923) ・オネゲル/交響的運動 第2番「ラグビー」(1928) ジョルジュ・ツィピーヌ指揮パリ音楽院管弦楽団 1953年2月24日録音 ・オネゲル/劇的物語「ニコラ・ド・フリュー」(1939) ジョルジュ・ツィピーヌ指揮パリ音楽院管弦楽団他 1953年3月11-16日録音 ・オネゲル/クリスマス・カンタータ (1953) ジョルジュ・ツィピーヌ指揮パリ音楽院管弦楽団他 1954年2月パリ録音 ・オネゲル/オラトリオ「世界の叫び」(1931) ジョルジュ・ツィピーヌ指揮フランス国立放送管弦楽団,合唱団他1957年パリ録音 これは、沢山入っている2敗組だが、私はただ「クリスマス・カンタータ」のためにだけこれを選んだ。二十世紀の奇蹟である。音楽も演奏も! 【PHILIPS/PHCP-3548〜9】 ・ブルックナー/交響曲 第8番 ハ短調 (1889〜1890,ハース版) 1981年5月25-26日録音 ・ワーグナー/ジークフリート牧歌 (1870) ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1974年12月2-4日アムステルダム、コンセルトヘボウ録音 悲しい時は、これを聞いて神に祈りを捧げたい。豊かで広がりのあるサウンドに心が癒されること間違いない。併録のジークフリート牧歌も素晴らしい。これを聞いて、愛情なんていうことを忘れないようにしたいものだ。 【BMG/BVCC-8819】 ・シュトラウスⅡ/ワルツ「芸術家の生活」Op.316 (1867) ・シュトラウスⅡ/ワルツ「ウィーン気質」Op.354 (1871) ・シュトラウスⅡ/宝のワルツ Op.418 (1885) 〜 歌劇「ジプシー男爵」より ・シュトラウスⅡ/ワルツ「南国のバラ」Op.388 (1880) ・シュトラウスⅡ/ワルツ「美しき青きドナウ」Op.314 (1867) ・シュトラウスⅡ/皇帝円舞曲 Op.437 (1889) ・シュトラウスⅡ/ワルツ「朝の新聞」Op.279 (1864) ・シュトラウスⅡ/ポルカ「雷鳴と稲妻」Op.324 (1868) ・シュトラウス(Josef)/ワルツ「わが人生は愛と喜び」Op.263 (1869) ・シュトラウス(Josef)/ワルツ「オーストリアの村つばめ」Op.164 (1864) フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団1960年頃録音 これを聞けば、無人島でも心がうきうきしてくることだろう。リズムが弾み、弦が、管が歌い、踊る。たった一人の夜をきっとなぐさめてくれのではないだろうか? 【SONY Classical/SMK 64477】 ・モーツァルト/交響曲 第39番 変ホ長調 K.543 (1788) 1953年12月21日,1956年3月5日録音 ・モーツァルト/交響曲 第40番 ト短調 K.550 (1788) 1953年2月23日録音 ・モーツァルト/交響曲 第41番 ハ長調「ジュピター」K.551 (1788) 1956年3月5日録音 ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニック 中学生の時、LPを何百回と聞いてとうとう駄目にしてしまった一枚。これを聞くと今でも中学時代を思い出す。なんとなく思い出のアルバムみたいだが・・・。 スイス・イタリア語圏の町ルガーノのはずれにあるワルターのお墓に行った時、ふと耳に聞こえてきた気がしたのを思い出した。聖アボンディオ教会の墓地にある彼の墓には、妻、そして二人の娘とともに名指揮者ワルターが永遠の眠りについている。 【DINEMEC CLASSICS/DCCD 017】 ・シューベルト/マニフィカート ハ長調 D.486 (1815) ・シューベルト/ミサ曲 第5番 変イ長調 D.678 (1819-22) ミシェル・コルボ指揮リスボン・グルベンキアン財団管弦楽団、合唱団他 1996年12月19,20日リスボン録音 これはミサ曲の方を。このミサの美しさは別格だ。デュリュフレにしようか、フォーレにしようか迷ったあげく、これにした。冒頭から救いの慰めに満ちている。こんな救いの音楽をシューベルトは書いたのだ!! コルボの演奏は一時の角張ったスタイルから随分修正してきているものの、あと一歩か?しかし、ローザンヌでの録音ほど角張って刺激的でないので、やはりこちらでよいだろう。 【LONDON/POCL-1044】 ・ドビュッシー/海 〜3つの交響的スケッチ (1903〜5) ・ドビュッシー/バレエ音楽「遊戯」(1912-13) ・ドビュッシー/カプレ編曲/交響的断章「聖セバスティアンの殉教」(1911) ・ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲 (1894) シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 1989年5月1,4,9日,10月5,8日録音 無人島で海ばかり見て過ごすのなら、やはりドビュッシーの「海」が最高のBGMになってくれることだろう。 シャルル・デュトワの演奏は、何度聞いても新鮮で美しい。サウンドの完璧さと音楽の伸びやかさが同居した極めて稀な名演の一つ。 これは、一週間もしたら違うものが入り込むに違いないような代物で、選んでからもショスタコーヴィチが居ないじゃないかとか、シベリウスの第5番あたりが入っていてもよかったかなとか、シューベルトのピアノ・トリオの第2番もいいなぁとか、ドヴォルザークの第8番かスターバト・マーテルあたりもどうだったかなぁとか、ショパンも、あるいは、バッハは平均率クラヴィーア曲集でもよかったのではとか、色々思っている次第である。 それに他人のこんなものは誰も興味がないと思うので、全く自己満足でやったことだが、それにしては面白かった。またいつかやってみようと思う。
by Schweizer_Musik
| 2006-02-20 00:11
| 原稿書きの合間に
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