サックス四重奏のための三章「スイスの小さな旅」完成
頭の中で出来上がっていたのをFinaleでスコアを完成させた。第2楽章であるが、メロディーは数日前に思いついていて、それをどう料理するかで色々考えていたもの。
曲名は「ミューレンの夕暮れ」としたが、スイスに詳しくない人には全くわけのわからない話かも知れない。
昔、女王陛下の007の悪役の基地があったところという設定で、ロケが行われたことがある。ジェームス・ボンドがスキーで飛び出して行くのが現在ではシルトホルンという展望台で、ミューレンからロープウェイで行く。
あの映画はスイスの多くの場所がロケ地となっている。まだ鉄道が通っていたフルカ峠なども懐かしいが、話がちょっと横道にそれてしまった。

「ウィーンやパリ、ロンドンなどよりも私はミューレンが好きだ」と言った人がいたと言うが、私もスイスでシルスマリア(ニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」を書いた村)とミューレンが特に好きなのだ。特にこのミューレンは独特の雰囲気がある村で、私ははじめてスイスを訪れた時に泊まってそのまま何年も通い続けた。
一般車の乗り入れが禁止されていることもあり、ハイキングの人達が帰ると本当に静かになる。かすかな風の音だけが聞こえてくる村を、黄昏の中を散歩したことが忘れられない。
私が死んだら、ぜひあのミューレンの村のどこから散骨してもらえれば・・・と思う。

このミューレンをブラームスが頻繁に訪れている。ハイキングで来ているのだが、何度か泊まってもいるようだ。彼が来ていた頃は、ミューレンは陸の孤島だった。U字谷の上に引っかかっているような小さな村だけに、もの凄い坂を登らないとたどり着けない。一般車の乗り入れが禁止されていると書いたが、禁止しなくても入れない所に今もある・・・。だから太っていたブラームスがここに何度も来ていたとは驚くしかない。

第2楽章はこんな思い出と共に書いた。静かで、透明な空気と柔らかな時の流れ、そしてホスピタリティにあふれた村の人々。ゆったりとメロディーをよく歌って演奏してほしいものだ。いつものようにこちらからダウンロードしてどうぞ。
by Schweizer_Musik | 2006-04-07 18:45 | 原稿書きの合間に
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