ラトル指揮バーミンガム市交響楽団のマーラーの第10番(クック完成版)
CD−R盤で1992年ライブ録音のようだ。滅多に手を出さないジャンルなのだが、先日yurikamomeさんの記事を読んで、ラトルがこの曲を長年取り組んでいることを思い出し、彼が輝いていた1990年代の手兵との録音はどうだったか、猛然と興味を抱き、つい購入してしまったもの。
正規盤はみんなが推薦しているので、今更私がとりあげても仕方ないので、そのままにしておこう。
実は「クック版」については、いろんな人が批判している。マーラーの弟子でもあったワルターもその一人だ。書き残した部分もそのままに出版されている。第1楽章もクルシェネクが部分的に手を入れているというが、それほど詳しくない私、どこがどうともわからない。第3楽章は形に出来る程度のメモが残っていたのか、クルシェネクが補筆完成していた。他はもう断片としか言いようのないものだけなので、マーラーの素材でクックが作曲したものとして考えた方が良さそうだ。
1960年にBBCで初演されてからすでに46年。このクック版に更に手を加えたルドルフ・バルシャイによる版などいくつかの新しい「完成版」が作られ録音されている。
さて、ラトルのこの曲の録音、いくつ残っているのか知らないが、かなり若い頃にボーンマス交響楽団と録音していた。聞いたはずだけれど、全く記憶が残っていない。
1998年のベルリン・フィルとの録音は聞きそびれたままだ。きっとすばらしいものだったのだろうが、まっ、そのうち聞く機会があるだろう。
で、このバーミンガム市交響楽団との録音はライブということだが、確かに会場ノイズはあるが、すばらしい録音であったのがうれしい。で演奏は、全くすごいとしか言いようのないもの。ああこんな演奏をしょっちゅう聞けたバーミンガムの人々が羨ましい。
第1楽章から気合いのこもった演奏で、腰が抜けてしまった…(嘘です)。
圧倒的な演奏で、5楽章まで、まんじりともしないで、聞いてしまった。朝五時に起きて、すぐに聞き始めてやっと終わったところ。
しかし、第1楽章のとぼとぼとした歩みの、どことなく未完成感のある音楽に対して、他の楽章が完成しすぎているのが不満といえば不満。終楽章で、1楽章のクラスター風のトゥッティ、そしてあの煉獄をもぞもぞはい回るような第一主題がホルンとトランペットで帰ってくるあたり、あまりに決まりすぎていて、やっぱりマーラーはこうは書かなかったのではという気がしてくる。
トルソはトルソのままにしておいた方が無難ではないのだろうか?いや、しかし良い演奏だ。今まで聞いてきたシャイーの演奏がそんなに悪かったわけではないのだが、これはすばらしい。聞き終わった今、しばらく声も出なかった。
ラトルの集中力の凄さ、バーミンガム市交響楽団との信頼関係の強さを感じさせられた。ベルリンでもこうした関係が作られるのだろうか?
正規盤ではないので、今回は何もつけない。
by Schweizer_Musik | 2006-06-01 06:32 | CD試聴記
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