フルトヴェングラーがレパートリーとしながら、全く(なのかどうかは私は研究家ではないので知らないが)録音が残っていないものを少しあげてみようと思う。
彼が、作曲もしたことはよく知られている。だからというわけでもないのだろうが、同時代の音楽を数多くレパートリーに取り入れていたり、あるいは初演の指揮をとっていたりすることは、あまり知られていない。 例えば、1924年3月6日の演奏会ではヴィルヘルム・ケンプ(そう!あのピアニストのケンプです!)の作曲した交響曲第2番の初演をしていたり(どうも評判が良くなかったのか、その後再演はされていないようだが)、 例えば、ほとんど録音を聞いたことがない、ドビュッシーの「海」や「ノクチェルヌ」「牧神の午後への前奏曲」などといった作品も1930年代に頻繁に演奏会で取り上げられている。またラヴェルのボレロなんて曲がプログラムも飾っている。これをフルトヴェングラーで聞くなんて、ちょっと下手物趣味だと言われそうだが…。しかし、スペイン狂詩曲や「ダフニスとクロエ」の有名な第2組曲は録音が残っていて、聞くことも出来るので、それから想像できなくもない。 こうした管弦楽の技巧派の作品で、レスピーギの「ローマの祭り」や、ストラヴィンスキーの諸作品(「火の鳥」「春の祭典」、作曲者のソロによるピアノと管楽のための協奏曲など)が取り上げられていることも申し添えておきたい。 1933年1月にライプツィヒで行われたベルリン・フィルの演奏会ではストラヴィンスキーの組曲第1番もとりあげられているのだ。簡潔な新古典主義の作品で、フルトヴェングラーがどう料理してくれたのか、想像するだけで楽しい。 彼の指揮は見難いとよく評された。わかりやすい指揮が出来なかったという意見もあるが、それはどうも間違いらしい。彼はある人の前で、わかりやすく振ることもできると言って見せ、その後で、これでは私の欲しい音は得られないと言ったそうだ。なるほど! 彼は決して指揮技術が未熟でも何でもなかった。彼の音楽を評価する際によく「振ると面食らう(フルトメンクラウ)」という言葉が添えられることがあるが、これは全く不当な言葉だ。また、この変な駄洒落はよく故山田一雄氏に捧げられた言葉であり、フルトヴェングラーにはあまり似つかわしくない。 だから、彼が極端に高度な指揮技術を要求される近代作品を指揮するのは下手だったとか言うのも、全く無理解から来る言葉なのだ。でなければ、リヒャルト・シュトラウスの作品なんて指揮できるはずがない。 1929年11月10日,11日のベルリン・フィルの定期ではバッハの前奏曲とフーガ変ホ長調「聖アンのフーガ」をシェーンベルクが編曲したものまでとりあげているのだ。もちろん、新ウィーン楽派の初期の作品もとりあげている。が、無調以降は無視しているようだ。 フルトヴェングラーは1950年代になってようやく世間のマーラー人気に気づき、レパートリーに取り入れたとか、見当違いも甚だしい評論家の「お話」を何度も聞かされたものだが、それもまた嘘である。 1920年頃から積極的にマーラーの初期の作品をフルトヴェングラーは演奏会に取り上げてもいる。残された録音が、フィッシャー=ディースカウとの「さすらう若人の歌」だけなので、よく調べたりしない評論家がそう思いこんで言いふらしてしまっただけのようだ。 1920年代には第3番の交響曲がなんどか取り上げられていて、フルトヴェングラーのレパートリーとして確立していた。第2番「復活」や第1番も回数は少ないものの、フルトヴェングラーのレパートリーとして定着していたようなのだ。ああ、聞いてみたい。「復活」の終楽章はさぞすごかったことだろう!!
by Schweizer_Musik
| 2006-06-13 00:41
| 夢の演奏
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