ベートーヴェンのピアノ・トリオ第1番、カザルス他の演奏でいかが?
調べ物をして時間を過ごしていると、いつの間にか時間が経っていてびっくりする。一日ほとんど音楽を聞かないままに過ごしていたので、疲れて聞き始めたのがベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番。演奏はイストミンのピアノ、フックスのヴァイオリン、そしてカザルスのチェロ。音はモノラルであるが、なんて生き生きとしているのだろう。楽想も力が弾けそうだ。
ベートーヴェンが自らはじめて自分の作品に作品番号をつけた作品である。意気揚々として書いたに違いない。希望と未来を信じる若者らしいひたむきな強さがこの曲にあふれていて、私の疲れた時の定番となっている。
演奏もこのカザルスの録音でなくてはならない。アシュケナージなどの健康で歌にあふれた演奏やケンプ、シェリング、フルニエの魅力あふれる音楽、ヴァン・オールトのピアノ、寺神戸亮のヴァイオリン、鈴木秀美のチェロによる録音も決して忘れているわけではないのだが、やはりこんなに心をワクワクさせてエネルギーをくれる音楽と演奏はこれしかない。
1953年7月5日フランス、プラード音楽祭で録音されたこれは、すでにルフェヴールやハスキルでは売れないからと米コロンビアがアーティストを自社と契約している演奏家たちににして行われたものだった。(音楽祭がカザルスのあずかり知らぬところで、米資本の食い物となってしまったことが返す返すも残念でならない)
しかし、この音楽の力の入れようはどうだ!ベートーヴェンはこの室内楽を30分をゆうに越える当時としてもとても長い、大作として仕上げている。ピアノ・トリオと言えば、あまり注目されず、せいぜい第7番のArchduke Trioだけが話題となり、よく知っている人でも第5番の「幽霊」などという変な名前をつけられてしまった作品やクラリネットでも可したおかげでベートーヴェンの唯一のクラリネット作品となった「街の歌」という名前を持つ第4番あたりまでが話題となる程度だ。
この第1番が名曲として扱われることはついぞ見たことがない。しかし、これは良い曲ですよ!!(私が言うまでもないか…)
第3楽章の意表をついた開始なんてもうベートーヴェン以外に考えられないスケルツォだ。(スケルツォのお手本としてもこれほど適当な作品が他にあろうか!)
フックスのヴァイオリンは渋い!!これがアルチュール・グリュミオーだったらと一瞬考えないでもないのだが(グリュミオーもカザルスと音楽祭で共演している)、フックスもさすがと言うべきで、私は不満など全く感じない。
イストミンのピアノを聞くとこの人が何故、ワルターの唯一のシューマンのピアノ協奏曲でソリストに選ばれたか、わかる気がしてきた。(ただ、ワルターの指揮であっても、私はあの演奏は全く気に入らない)
このトリオでのイストミンは全く素晴らしい!!カザルスが低音から積極的に働きかけていることもなかなかにスリリングであるが、丁々発止とそれを受け止め返していくフックスとイストミンにも脱帽だ。
聞いたことがないという方、ぜひ一度私に欺されて聞いてみませんか?図書館などで探してみられたらいいでしょう。元気がもらえます!!
しかし、こんな素晴らしい録音が廃盤のままなんて!!

SONY-Classical/SRCR 9355〜66
by Schweizer_Musik | 2006-07-09 04:17
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