企画「夏の音楽、ヨーロッパ旅行」
暑いですね。梅雨明けはいつだろうと気になりながらも、暑さだけはしっかり我が家にも押し寄せていて、どうにも仕事が進まないでいます。
恒例の季節ものの音楽シリーズで、少し涼んでみましょう。

まず、ディーリアスの小管弦楽のための2つの小品から「河の上の夏の夜」は如何でしょう。ディーリアスは季節物の宝庫で、夏の音楽もいくつも残しています。2つの無伴奏パート・ソング「夏の夜、水の上にて歌える」 から第2番もなかなかさわやかな佳曲です。全曲がヴォカリーズで歌われる歌詞のない合唱作品で、テノールのソロが涼しげで良いのですよ。
「河の上の夏の夜」はビーチャムの名演がありますし、2つの無伴奏パート・ソングは作曲家のジョン・ラッター指揮で出ています。

続いて、夏と言えば北欧でしょう。短い夏を謳歌する北欧の人々にとって夏は特別の存在のようです。アルヴェーンが作曲したスウェーデン狂詩曲 第1番「夏至祭」は中でも良く知られた名曲中の名曲と言えるでしょうね。作曲者自身の指揮でもステレオで録音が出ていますが、最新のものから大植英次氏の指揮した録音をあげておきましょうか。(REFERENCE RECORDINGS/RR-80CD)

続いて、スイスの作曲家シェックの「夏の夜 (田園風間奏曲)」は如何でしょう。弦楽オーケストラのささやくような音楽は、夏の夜の寝苦しさを忘れさせてくれること間違いなさそうですよ。シェックの後期はロマン主義への回帰が顕著なのですが、この作品などはその始まりを告げるものとして重要です。
演奏は、ルドルフ・バウムガルトナー指揮ルツェルン祝祭弦楽合奏団( EURODISC/BMG/69223-2-RG)が良いのですが、手に入りにくいかも…。ゴリツキの指揮によるものはテンポが遅すぎてベタベタ湿度が高すぎるようで、私は好みません。カメラータ・ベルンによる2000年録音によるもの(スイスMGB/CES-M 69)は、少し走り気味ですが、よく歌っていて気持ちの良いすっきり感が持ち味です。オルテンのシアターで録音されたと言いますが、N島くん、懐かしいでしょ?

コダーイの「夏の夕べ」はごく初期の作品ながら、完成度の高い佳作です。アンタル・ドラティによるコダーイの管弦楽選集に入っているこの演奏は、作曲者自身の録音に比べ、テンポなどとてもすっきりしていて、私は好んで聞いています。フィルハーモニア・フンガリカも大変よい演奏をしていると思います。(LONDON/F75L-20341〜3)

イギリス、スウェーデン、スイス、ハンガリーと来ました。そろそろドイツの夏を聞いてみましょうか?
ブラームスがハイネの詩に作曲した「夏の夕べ」という曲はどうでしょう。6つのリート Op.85という1878年の曲集の最初をかざる作品です。フィッシャー=ディースカウとバレンボイムによるブラームス歌曲全集に含まれる録音は、実に完成度の高いもので、できればこちらを聞いて欲しいのですが…。(Grammophon/POCG-9076〜83)

オーストリアの夏の歌はウェーベルンをあげたいと思います。彼がまだシェーンベルクに習う前、マーラーなどの影響を深く受けていた時代の作品で、最近、よく演奏されるようになった「夏風の中で」です。静かな開始部、鳥の歌が聞こえる中、優しいメロディーがゆったりと流れる部分だけを聞いたら、あのウェーベルンがこんなロマンチックな音楽を書いていたということに驚かされることでしょう。
ピエール・ブーレーズ指揮ベルリン・フィルハーモニー1994年5月録音のグラモフォン盤でどうぞ。

イタリアは誰に代表してもらおうか?ロマン派の作曲家が続いたので、バロックの巨匠ヴィヴァルディは如何でしょう。超有名曲「四季」の第2曲「夏」は優しいわけでもなんでもなく、この曲集の中で最も激烈な表現の作品。これを聞いて冷や汗でも流しておこうかと思っています。演奏は?どれでもお好みのものをどうぞ。私はジュリアーノ・カルミニョーラ(vn),ソナトリ・デ・ラ・ジオイオーサ・マルカによる1992年の録音(DIVOX ANTIQUA/CDX 79404)で聞いています。

フランスは後回しにしてスペインへ。とは言え、ロシアの作曲家によるスペインの作品です。グリンカの管弦楽の作品でスペイン序曲 第2番「マドリードの夏の夜の思い出」という曲は、親しみやすいメロディーと19世紀半ばとは言え洒落たオーケストレーションで中々に聞かせます。演奏はロシアの巨人指揮者スヴェトラーノフで。(BMG/74321 53461 2) 手に入りにくいかも知れませんが、これに勝る演奏は未だに聞いたことがありません。

最後はフランス。ルーセルの交響曲第1番の第3楽章が「夏の夕べ」というタイトルを持つので、それにしようと思っていたのですが、ダンディの交響詩「山の夏の日」にしようと思います。
第1楽章「あかつき」、第2楽章「昼、松の下の午後」、第3楽章「夕暮れ」というタイトルを持ち、作曲者50才を越えた円熟した技法によるこの作品の価値は、あまりに知られていないと思うからです。マレク・ヤノフスキ指揮フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団の見事な演奏がCDになっています。(Warner Classics/0927-49809-2)
フランスはもう一曲。ベルリオーズの歌曲集「夏の夜」をあげておきたいと思います。歌曲はちょっと…と敬遠しないでください。こんなに良いオケつきの歌曲を忘れてしまうには惜しいですよ。あっ、カントルーブの「トリプティク」という歌曲集の中の第一曲「夏への捧げ物」も…。ああ際限なくなりそう…。とりあえずベルリオーズの演奏として、レジーヌ・クレスパンのソプラノ、アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団によるステレオ録音をあげておきます。

後、ヨーロッパの夏を旅行して回ったのですが、最後に番外編で、林光が1985年に京都市の委嘱で作曲した「吹き抜けたる夏風の祭」を小泉和裕指揮 京都市交響楽団(DENON_33CO-2545)で如何でしょう。ちょっとしたアニメの音楽みたいでなかなか聞かせ上手で、何しろ作曲者が敏腕の林光ですから、一筋縄ではいきません。


オネゲルの夏の牧歌についての言及は次のエントリーをご参考までに…
モードによる作曲法について(4) - オネゲルの「夏の牧歌」
by Schweizer_Musik | 2006-07-10 21:59 | 音楽時事
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