新シリーズ・今日の一曲 (1)
私の好きな曲を書く「今日の一曲」というシリーズを始めます。
yurikamomeさんのように毎日やる自信なんて全くありません。私のこの移り気な性格ではせいぜい不定期で、書きたいときに書く程度ですので、テキトーに突っ込みをいれてもらえればと思います。
何しろ飽きっぽい性格なのでどれだけ続くやら…。

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今日は終戦記念日。鎮魂の日だ。だからそういう曲をと思ったが、音楽を聞いて祈るなんて不謹慎と思いやめることにした。でヴォーン=ウイリアムズのロンドン交響曲(交響曲第2番)をとりあげることにした。
この曲は1912年に書かれ、1920年、そして1953年とにどにわたって改訂が行われている。交響曲第2番「ロンドン」としている場合も多いが、ヴォーン=ウイリアムズはロンドン交響曲としている。
この曲はもともと交響詩として作曲していたヴォーン=ウイリアムズに対して作曲家のバターワースが交響曲にするように勧め、あらためて交響曲として完成したという経緯がある。ちなみにバターワースは第一次世界大戦に志願して従軍し、「1916年7月1日から同11月19日まで、フランス北部、ピカルディ地方を流れるソンム河畔の戦線において展開された」(Wikipediaより)ソンムの戦いで、8月5日に狙撃され亡くなった作曲家である。
ヴォーン=ウイリアムズは、この友人にこの作品を捧げている。
イギリスの民謡を溺愛していたヴォーン=ウイリアムズだけに、古代旋法を徹底して使った作品であり、至る所に民謡をもとにしたと思われるメロディーが現れ、親しみやすい作品ともなっている。第一楽章にはロンドンのウェストミンスター寺院に付属する時計塔の鐘の音が挿入されている。あれは「ウェストミンスターの鐘」という曲なのだそうだ。四つの音だけで出来たあのメロディーは、我が国の小学校などのチャイムに使われていたりしていた。今でも使われているのだろうか?
第2楽章の悲哀に満ちた響きはどうだろう!!あえぐように歌うオーボエのメロディーははるか彼方にトリスタンとイゾルデがいるようでもある。しかし、この胸を締め付けるような音楽はまさに永訣の悲哀の音楽であると言えよう。
ホルンが、そしてトランペットが戦争が柔らかく吹き鳴らすメロディーが間にはさまれるが、それは悲惨な戦争が終わったことを告げる夕刻のラッパのようでもある。
終楽章の陰惨極まる開始部、そしてそれに続く厳かな行進もまた、何かを思い、何かを受け取るべきメッセージがあるように思う。
前にとりあげた「田園交響曲」もそうした作品だった。ヴォーン=ウイリアムズというのは、意外に一筋縄ではいかない作曲家だ。

今、小泉首相が靖国神社を参拝している。個人的に戦没者に対して国を代表する人が、その記念日に礼をつくすのは当然と考えている。ただあまりに難しい問題が含まれるようで、私は何とも言えない。
ただ、静かな祈りの日であって欲しいと思う。にぎやかなどこかの団体が軍歌を流して走り回るのは、国の品位、品格を落とす蛮行だと思うのだが…。
by Schweizer_Musik | 2006-08-15 08:05 | 今日の一曲
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