今日の一曲はリストのピアノ協奏曲第2番。
またまた昔話で恐縮だが、中学生の頃、今から35年以上も前に、コロンビア・ダイアモンド・シリーズでこの曲を聞いて以来、私はこの曲が好きで好きで仕方がないのだ。第1番の方が傑作だという友人もいたが、私は第1番も良いのだが、こちらの第2番の方により愛着がある。 実はそのレコードでは第1番と第2番が入っていた。今でもその演奏は買うことが出来る。ブレンデルのピアノ、ミヒャエル・ギーレン指揮ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団(LPにはこの表記であった。実体はウィーン交響楽団)の演奏で、確かヴォックスの原盤ではなかったかと思う。 で、同時に聞いたのに第2番の方がずっと好きになってしまったのは、冒頭の和音の幻想的な響きに魅了されたためだろうと思う。音楽を始めたばかりの私には、A-F7-Bm-E7などという和音の連結は全く想像出来なかった。どうなっているのだろうと、電気オルガンで探しても(まだ私はピアノを持っていなかった)さっぱりわからず、楽譜もないし、調べようが無かったので、何度も何度も聞いて理解しようと努めた結果、この曲がものすごく好きになったというのが一番当たっていると思う。 そのレコードのジャケット(CD時代になってこの楽しみがほとんど無くなってしまった。LPの大きいジャケットのインパクトはもの凄い物だったのだが)がフランス・アルプスの夕景で、それがまた音楽にピッタリだったのだ。 当時はどこの写真かわからなかったが、それはシャモニーから行くラック・ブランから、ドリュ、ヴェルト針峰、グランド・ジョラスの姿だった。手前の湖面はすでに陽が陰り、暗くなっていて、遠くの山々だけが夕陽に照らされて赤く輝いていた。 あの美しい写真は、私をアルプス、山好きにするきっかけの写真でもあった。 ともかく、その写真とともに、全く理解できない幻想的なハーモニーの連続は、おそらくはこの曲をはじめて聞いた十九世紀半ばのヨーロッパの人たちと同じ印象であっただろう。オーケストレーションを含め、なんども改訂されているが、基本的なオーケストレーションを施したのはどうもリスト自身ではなく、ヨアヒム・ラフであったみたいだ。 プライザーからかつて耳にタコができるほど聞いた演奏が出ているが(PREISER/90064)、この曲の録音を私はどれだけ持っているのだろう。数えたことがないのでわからないが、30種類以上になるのではないだろうか?リストの第2番で持っていないと何となく聞いてみたい思いに駆られてしまうのだ。それらの中では、リスト弾きとして有名なシフラとアンドレ・ヴァンデルノート、あるいはシフラの息子(かわいそうに事故死した)との録音も良いし、ブレンデルがハイティンクと再録音したもの(PHILIPS/17CD-1130この番号は20年前のものなので信用しないように!)や、名盤の誉れ高いリヒテルとコンドラシンのロンドンでの録音、クラウディオ・アラウの録音、クリスティアン・ツィメルマンと小澤征爾の録音など、良い演奏はたくさんある。 で、私がベスト・スリーを選ぶならまず、ラザール・ベルマンとジュリーニのグラモフォン盤のファンタスティックな名演、エマニュエル・アックスとエサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団による緊密なアンサンブルは、音楽の構造を極めて精密に描き出す名演。(SONY/SK53289) 3つ目はブレンデルとハイティンク指揮ロンドン・フィルかリヒテルとコンドラシンか迷った末にリヒテルに軍配をあげようかと思う。フィリップスのこの録音はコンサートと前後して録音されていて、コンサートのライブも確かどこかにあったはずだ。あまり音が良くなかったので、一度聞いてそのままになっているが…。
by Schweizer_Musik
| 2006-08-31 09:04
| 今日の一曲
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