スイス―中世都市の旅
スイス―中世都市の旅 _c0042908_7341055.jpgスイスの歴史についての第一人者である森田安一氏の「スイス―中世都市の旅 」は、出てから一年あまりである。
いくつかの国の本がシリーズとして出ていて、その中のスイスについての巻を森田氏が担当したようだ。140ページたらずの本であるが、全ページカラーという意欲的な作りで、驚く。写真もどれも良い仕上がりである。私が特に気に入った写真は、レマン湖から見た名山ダン・デュ・ミディなど、本当に美しい写真だ。
しかし、良い本であるがあまり売れていないらしく、一年以上たった今も第一版である。なんとももったいないところだ。ただ、良い写真が目に入り、この本の独自性というか、特色がぼけてしまったところがあるのかも知れない。
写真なら他でも見られるはずだ。それよりもこの本が、スイスの各都市の歴史と伝えられる町並みについて解説している点だ。「地球の歩き方」シリーズとは決定的に違うのだ。
ミシュランのグリーン・ガイドとエリア・ガイドのスイスだけが好きで、「地球の歩き方」シリーズははっきり言ってつまらない。旅の初心者向けということなら、あれで良いのかも知れないが、歴史や文化については全くと言っていいほど、こうしたガイドブックでは抜け落ちてしまう。
この点が私は不満なのだ。
前置きが多くなってしまった。
実は、この森田氏の本は、そうした不満を解消する、素晴らしい本だ。「世界 歴史の旅」というサブタイトルがシリーズについているが、確かに人を得た良い本だ。最近フランスについての良い本も出ている(このシリーズではないが)変わってきているのだろうか。
この本の中ではスイスの各都市が紹介されているが、ルガーノやトゥーン、アンデルマット、ブリークなどが抜けているのは残念だ。ベリンツォーナやロカルノは修道院との関係であるのに、惜しいところだ。
スイスの中世における修道院と司教座の影響は、アルプス地域では想像以上に大きいものがあるし、ルガーノやブリークはイタリアとの関係で、あるいはトゥーンのようなものすごく特徴的な町が抜けてしまうのは残念極まりない。
反面、ジュラ山地の都市やシャフハウゼン、フラウンフェルト、ザンクトガレンなどの東部スイスのドイツ語圏の都市がよく書かれているのでとても参考になる。
また、CDの解説を信じて、グリュイエールの城に保存されていたリストのピアノが、どうもまがい物らしいという記述があったのには驚いた。私はすっかりリストのものと思っていたが、その由来がはっきりしないこと(確かに、いきなり見つかっている点は不自然だ。それについては前から気になってはいた)を、こうきちんと書かれた本は、初めてだろう。
できれば、ツークやラッパースヴィル、アッペンツェルなど、スイス好きならばきっと好きになる町も紹介してほしいし、私の好きなルガーノやブリーク、トゥーンなども書いてほしいと思う。(それなら自分が書けと言われそうだが…)
本当に良い本だ。ライフログに加えているので、右下のリンクから購入できる。ぜひどうぞ・・・(私の本が出たら、もちろん買って下さい・・・お願い!)
by Schweizer_Musik | 2005-02-06 07:35 | 原稿書きの合間に
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