昨日の授業…
昨日は朝ちょっと忙しくしていて、つい出かける時間までぐずぐずしてしまい、朝ご飯を食べずに出かけ、案の定一限の終わり頃(11時前)にはたまらなくなってしまった(笑)。
午前中の授業では、これから弦楽四重奏を書かせなくてはならないので、モーツァルトのディヴェルティメントK136とスメタナの「わが生涯より」を分析する。
モーツァルトの方は弦楽の書き方のお手本で、モーツァルト大全集でアカデミー室内アンサンブルによる弦楽四重奏での演奏を持っているため、弦楽四重奏と弦楽合奏の響きの違い(特にコンバスの役割!)について説明した。ついでにコンバスについてわかっていない学生がいたので、楽器の説明を簡単に行うが、これはオマケ。あくまで弦の音の配置の仕方について説明した。
そこで休憩に入り、意地汚くも早弁をして(笑)、続いてスメタナの弦4を分析する。
この曲は素晴らしく面白い、良い曲なのに、どうも人気がないのは何とももったいない話である。
全楽章を簡単に分析し、ユニークな形式などについても示唆しておくが、何と言ってもこの循環主題的構成について言及しないではおられない。また、この作品の冒頭!曲調は全く違うのだが、二本のヴァイオリンがハーモニーを担当し、チェロがバスを保続。その間で幅広いメロディーをヴィオラが歌うという出だしは、ドヴォルザークの名作「アメリカ」にそっくり…。ドヴォルザークはあの歳になってもこうした先輩の作品をよく勉強していたということか。
第1楽章のテーマはもの凄いもので、実はテーマ16小節ほどあるのだが、たった一つの和音だけで出来ている。ロマン派のハーモニーが複雑化していく時代にあって、この単純さ!バロック初期のモンテヴェルディを思い起こしてしまう…。ホ短調の主和音で始まって、主題の確保はハ短調の主和音を転回して行われる。それも14小節(ちょっと短くなるが)たった一つの和音で奏でられるのだ。なんという大胆なことだ!
しかし、本当によく書けている(等と私如きが言うことではないのだが…笑)。舞曲調の第2楽章の面白さ!増和音がこんなにチャーミングなんて知らなかった。チェロのバグバイブの模倣が出てきたり。なんて愉しい曲なのだろう。そして第3楽章の詠嘆!同じメロディーを単純なハーモニーだけで最初奏でて、続いてその伴奏部分の配置をそのままにして変奏して奏でる。続いて配置を変えて歌いあげ、トゥッティに至る。
冒頭のチェロのソロは第1楽章冒頭のヴィオラのテーマの変奏で出来ている。この穏やかでいて、どこまでも悲劇的で苦しげな音楽の深い印象はどうであろう!
さて、終楽章の変形ロンドと最後の第1楽章などの回想は、当時としてもかなり大胆であるが、こうしたやり方、主題の単純な和音で書くという動きはドヴォルザークに受け継がれ、「新世界交響曲」という傑作を生み出すのである。
学生たちも、結構色々と聞いている者もいるのだけれど、スメタナのこの作品は聞いたことがなかった。いや室内楽、特に弦楽四重奏はオーケストラの原型であり、オケばかり聞かないで弦4をもっと勉強してほしいとつくづく思った。
午後はレッスンを4名ほどして授業をし、最後に一人レッスンをして一日が終わる。

朝の電車の中、そして休み時間などを使って弦4の曲を一曲書き上げた。少しハーモニーで暫定で書いてあるが、直さなくてはならないところもあり、まだまだここでお聴かせできる段階ではないけれど、ようやくいつものスピードで書けるようになってきた感じである。まだ本調子ではなく、思いつくのに時間がかかる。トップ・ギアにはまだ入らぬ。
レッスンしている途中、いきなりサックス専攻の学生がやってきて、今年もアレンジをお願いしたいとのこと。快諾をする。もう年中行事となっているので、料金据え置きでやることとなった。まぁ、昨年のプロコフィエフよりも短そうだが、曲が凄まじい!さてどうしようか。楽譜を探してみなくては…。何という曲だって?「サロメ」の中の「7つのヴェールの踊り」である。伊福部昭の曲ではない。リヒャルト・シュトラウスである!

追記
こんなことを書きながら、ナクソス・ミュージック・ライブラリーでブリスのピアノ協奏曲を聞いていた。ミュートン=ウッドというピアニストが1953年に録音したものだ。オケはユトレヒト管弦楽団。指揮はワルター・ケール。ミュートン=ウッドはゲイの恋人が亡くなったのを嘆き、後を追って自殺したピアニスト。自殺などしないで生きていれば、かなり良いピアニストになれたはずなのに、もったいないことである。チャイコフスキーのピアノ協奏曲全集などを持っているが、このブリスの協奏曲は大変難しい曲のようだが、快刀乱麻で、聞いていて気分がよろしい。
by Schweizer_Musik | 2007-07-18 05:16 | 授業のための覚え書き
<< 夏休み〜♪ オルウィンの音楽 >>