ミクロス・ローザのヴァイオリン協奏曲を聞く。モードの扱いなどはブロッホのヴァイオリン協奏曲のようで、面白かった。古典的なモードでなく合成音階によるモードであるが、古典モードのように響くのは、和音が4度構成や2度構成といった不協和や長短の特徴をもたないものを使わず、機能感を大切に書かれているからで、こうした行き方もあるのは事実だ。
ローザはハンガリーに生まれ、ライブツィヒ音楽院などで学んだ作曲家。1929年にヴァイオリン協奏曲第1番で楽壇の注目を集めたほどであるから、このヴァイオリン協奏曲(実質的に第2番?)でのヴァイオリンの扱いの見事さは当然なのかも知れない。 しかし、ハンガリー風のところもモードにあると言えばそうかも知れないが、もっとインターナショナルな、普遍的な表現を目指したもののように思われる。 ハイフェッツの依頼で書かれた作品だけに、いかにもハイフェッツ好みのようにも感じられたが、これはシゲティあたりに演奏してもらったら面白かったかも…。 第2楽章は比較的平易な語法で歌いあげていて、時代背景を考えるとなかなかに面白いところだ。1931年にアメリカにわたり、「ベン・ハー」などの数々の映画音楽ですでに功成り名を遂げていたミクロス・ローザが、まるで歴史スペクタクル映画の音楽のような第2楽章を書いているのだから。エリオット・カーターなどが巨大・複雑な音楽への指向を見せ、一方でケージなどの新しい実験が話題となりはじめた時代に符合する作品としてこの曲を聞けば、アメリカという国の音楽の多様性に気がつく。 アメリカと言えば、ガーシュウィンにコープランド、バーンスタインあたりで終わっていてはいけないということなのだろう。 終楽章のダイナミックな音楽、推進力にあふれた音楽は、そうした音楽へのスタンスの違いなどどうでも良くなってしまうほどの説得力だ。 それはロバート・マクデュフィーのヴァイオリン、ヨエル・レヴィ指揮アトランタ交響楽団の共演による力強く説得力のある演奏のおかげであり、テラークのいつもながらの見事な録音によるものだろう。 同じ盤にはチェロ協奏曲(1969)とハイフェッツとピアティゴルスキーのために書かれたヴァイオリンとチェロと管弦楽のための主題と変奏 Op.29A (1958)も入っている。 これらでは名手リン・ハレルがチェロを担当している。 近現代の音楽好きで、これをまだ聞いていないなら、バークシャーに急いだ方が良い。僅かな金額でこんな面白い音楽が聞けるチャンスである。 TELARC/CD-80518
by Schweizer_Musik
| 2007-07-22 11:22
| CD試聴記
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