涼を求めて (10) オネゲルの夏の牧歌
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夏と言えば、やはりオネゲルのこの「夏の牧歌」をとりあげないわけにはいかない。今まで何度も取り上げているので、今回は外そうと思うのだが、やはり素通りはできない。
ミクソリディアによるテーマは心地よいエキゾチシズムをたたえ、アルプスを越えてきた冷たい風を思い起こさせる。ざわめく木の葉の音が昼下がりの静かなアルプ(牧草地)に優しく響く。雲雀の歌がそこにアクセントをつけていく。
中間では人々の明るい話し声が加わるようでもある。ヨーロッパの人々にとってごく当たり前の夏の風景を描いたこの作品は、初演の時の聴衆の人気投票で一位となった曲である。人の心に残るメロディー、そして響きだと思う。しかしそれ以上に場面を思い描きやすい題材であったことが、人々の支持を得た理由ではないかと思う。
オネゲルがこの曲を書いたのは、写真のユングフラウを間近に望むヴェンゲンの村だった。斜面一面が牧草地で、夏ならば放牧されている高地で、あちらこちらにハイキング・コースがある。登山列車はいつも満員だが、ハイキング・コースは人影もまばらで、お弁当を持ってピクニックに出かける幸福な家族連れの姿を幾組も見られることだろう。
懐かしい写真とともに、このシリーズの10回記念に…。
古いシェルヘン指揮ロイヤル・フィルのCD(Westminster/MVCW 14032〜33)は今も手にはいるのだろうか?ライブで音は多少問題ありのステレオ録音であるが、シャルル・ミュンシュ指揮フランス国立放送管のCD(DISQUES MONTAIGNE/WM 328)も手に入りにくいらしい。となれば、マルティノン指揮フランス国立放送管のCD(EMI/TOCE-8205)がいいだろう。ナクソスには湯浅卓雄指揮ニュージーランド管弦楽団の演奏がある。ややカンタービレが効いていないのか、一本調子でサラサラ流れてしまうところが少し不満。クレッシェンドしていくところももっとタメというか、深いブレスで盛り上げていってほしいのだけれど、ちょっと腰が軽い。中間部などなかなか良いのだけれど、冒頭と再現での単調さは、私の好きなところが今ひとつである。CDを買ってすぐに聞いて不満をもってそのままになっていた。久しぶりにとりだして聞いてみて、発売当初の感想を思い出した…。
by Schweizer_Musik | 2007-07-28 13:03 | CD試聴記
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