秋の夜長に音楽を聞く -11. シベリウスの交響曲第2番
トゥビンの録音で素晴らしいパフォーマンスを聞かせたヴォルメルがオーストラリアのアデレード交響楽団を振ったシベリウスの交響曲がナクソスにあったので、聞く。なかなか良いのでこれをシリーズ11回目の曲にしてしまった(何しろ選考基準は無く、私の直感だけなので…)。
実は第4番か第5番とも思ったのだが、第4番は重すぎて秋がジメジメしそうで却下、第5番は初夏にこそ相応しいのではと思い、中間をとって第3番も魅力的かなと思うのだが、色々書いてきてこの第2番について書いたことがなかったように思い始めたことも理由である。
というより、私はシベリウスの作品の中でも最も人気のあるこの曲があまり好きでなかったのだ。嫌いな曲というわけではないのだが、後期の滋味豊かな音楽の素晴らしさについつい興味が行ってしまい、初期の第2番などに手が回らないのだ。
このヴォルメルの録音、初めてではないが、あまり聞くことのないオーストラリアのオケ、それもアデレードのオーケストラということで、興味はまずオケへという具合であった。
私はマデトヤやトゥビンの録音でしかヴォルメルを知らないのだが、この指揮者、なかなかやるなぁと思った。アンサンブルが丁寧でとてもよく練れているのだ。声部のやりとりがスムーズで聞きやすい音楽作りであり、何と言っても解釈に無理がないのだ。
テンポか極端になることはないし、スコアから聞き慣れない声部を強調してマニエリズムの誘惑にとらわれたりもしない。
だからスタンダードな演奏解釈でもの珍しいことはないけれど、決してつまらないなどということはない。目新しさや演奏家の個性が聞きたい人にはつまらないだろうが、その音楽そのものを聞きたい人にとっては、これで十分だと思うのだ。
アデレードのオーケストラはとてもよくやっていると思う。ソロなどでもっと音に美感があればという瞬間がないと言えば噓になるが、不満を感じることはなかった。
何度も何度もリハーサルを重ね、アンサンブルをまとめ上げたからであろう。
珍しい作品の録音だけでなく、こうしたスタンダードなレパートリーでも彼らが着実に実績を積んでいっていることに、今後も注目していきたいと思う。

ちなみに、この録音を聞きたいと思ったのはジャケット写真の素晴らしさであった。ああこの曲のイメージそのままだと思った。
シベリウスの第2番は幸せで明るい勝利の終楽章で終わる。それでもベートーヴェンの第5番のような一直線に勝利の大行進に至るわけではないのだけれど、後年の第5番の魁けのような部分もあり、こうしてのんびり何度か(私は二度聞き返した…)聞いていると、そんなことがわかってきて面白い。
秋の夜長にシベリウスはとても合うようだ…。それでは第7番をこれから聞こうか。このヴォルメルは第2番と第7番をカップリングしているのだ…。なかなか洒落た選曲だなぁと思った。
by Schweizer_Musik | 2007-11-05 18:54 | 秋の夜長に音楽を聞く
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