モーツァルトと同時代の交響曲シリーズ : ピチェル/バーメルト指揮 ****(推薦)
マティアス・バーメルトがシャンドスでシリーズ化して好評のモーツァルトと同時代の交響曲シリーズの中から、ボヘミアの作曲家ピチェルの交響曲を収めた1998年録音のものをとりあげる。

全部で五曲の交響曲が一枚のCDにおさめられている。一曲を除いて三楽章からなるもので、確かに前古典派のスタイルの典型のような作品である。これらは1769年から翌年にかけて作曲され、1779年にライプツィヒでブライトコップによって出版されている。
モーツァルトは歌劇「ポントの王ミトリダーテ」を作曲し、交響曲は第9番あたりから第11番あたりを作曲している。ハイドンはシュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)の芸術運動のまっただ中にいた。
この時代にピチェルが書いたのは、そう表現主義的でないギャラントなスタイルを維持した古典的な様式の交響曲だった。変ロ長調における終楽章の低音と高音の掛け合いのポリフォニックな展開の面白さは、なかなか他で味わえないもので、お薦めであるし、どの曲も演奏が素晴らしい。
マティアス・バーメルトはスイス生まれの実力派の中堅指揮者である。素晴らしいアンサンブルで応えているロンドン・モーツァルト・プレーヤーズは1949年に設立されたアンサンブルで、ボイド・ニールなどと同じ時代に人気を得ていた。1993年にマティアス・バーメルトが音楽監督に就任して、このシリーズで世界的にも大きな評価を得ることとなった。
どの作品も発展途上でも、二流の作品でもなく、演奏も第一級のものばかりである。これは素晴らしいものだ。唯一四楽章制によるニ長調の交響曲は「ディアナ」というタイトルを持つが、どういう経緯でこの曲が出来たのかは、ライナーに書いていないのでわからなかった。出来ればそうした情報も載せてほしいものだ。形式やテンポなどはライナーに書かれなくても聞けばわかる。でも由来は聞いてもわからない・・・。
多少不親切ではあるが、このシリーズを多くの人に知ってもらうことは決して意味のないことではないと思う。ぜひ御一聴あれ!

CHANDOS/CHAN 9740
by Schweizer_Musik | 2005-02-20 20:43 | CD試聴記
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