冬の夜の慰めに (18) シュレーカーのヴァルス・レント
ようやく冬休みに入る。あとは25日にちょっとだけ出かければ良いだけで、少しホッとしたためか、今朝は大寝坊で、九時半過ぎに起きた。こんな寝坊をしたのは最近ではちょっと記憶がない。
とは言え、ちょっと時間がたつと記憶が…。最近健忘症が酷いので、この記憶にないというのも怪しいものなのだけれど。

ドイツ・ロマン派末期の作曲家シュレーカーは、私のようなB級グルメ・ファンには巨匠級の作曲家である。
その彼が1908年に書いた「ヴァルス・レント」(簡単に言えば「ゆっくりとしたテンポのワルツ」…)は、いかにも冬に聞きたい音楽だと思うが、いかがだろう。
ユダヤ人の写真家と没落貴族の両親の元、モナコで生まれた彼は、ヨーロッパ中を転々としながら育っていったが、父が亡くなった後、ウィーンに定住するようになり、フックスの元で作曲を学んだ。
作曲家として名声を確立したのは1912年の歌劇「はるかなる響き」によってであって、この「ヴァルス・レント」は合唱団の指揮などをしてなんとか食べていた頃の作品ということになる。

とは言え、このワルツの美しく溌剌とした表現は、30才の彼が、ツェムリンスキーやシェーンベルクに出会い、その後、ロマン派の系譜が辿る表現主義をはじめとする多様な様式をとりいれていったシュレーカーの根本が後期ロマン派にあったことを示していて興味深い。
キラキラとグロッケンなどを多用したオーケストレーションは、雪舞い散るこの季節にピッタリだし、音楽が変に陰気になっていないところが何とも私の好むところである。
昔はリッケンバッヒャーの指揮した独コッホ盤で聞いていたけれど、ちょっと荒っぽくて今ひとつ共感できない感じだったけれど、シャンドスからシナイスキー盤が出てからすっかりこの曲が好きになり、一時、毎日聞いていたりした。
最近のお気に入りはティントナー指揮シンフォニア・スコシアによるCBC盤である。カナダのハリファクスのこのオケはナクソスのティントナーの追悼盤などで初めて知ったのだが(無知をさらしているようでお恥ずかしい限り…)、この演奏はとてもデリケートで美しい。
ただ、内声の動きなどがよく聞き取れず(録音の問題なのか、指揮者の解釈の問題なのかはわからないが)その点は少々不満ではある。
シャンドスのシナイスキーの指揮した演奏は、少し整いすぎているところが不満で、もう少し情感豊かに演奏してくれれば…などと思う。
なかなか理想の演奏に巡り会えていないのだが、まぁ、とりあえずこの2つの演奏があれば良い。そしてこの2つはともにナクソスにあるので、いつでも聞けるのはありがたいことだ。
by Schweizer_Musik | 2007-12-22 12:15 | (新)冬の夜の慰めに…
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