冬の夜の慰めに (26) ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76-5
様々な弦楽四重奏曲がある中で、最大の傑作はどれかと言われると、とても私には選べそうもない。でも、最も好きな曲はと言われれば、躊躇なく私はハイドンのOp.76の五番目にあるニ長調の四重奏曲をあげる。というよりも、その第2楽章が大好きなのだ。
このメロディーにしみじみとした味わいは、嬰ヘ長調という、なんともファンタスティックな調性=響きの上に、極めて単純な分散和音から出来ている。
なんともしみじみしとして良いメロディーではないか。ハイドンは「機知に富んでいて…」などという軽いきまり文句がいかに信用に値しないことか!
Largo cantabile e mestoというロマン派の作品のような速度記号を見るだけで、この音楽にハイドンがどれだけの思いを込めていたかわかるだろう。
暖かい部屋の窓に映る、冬枯れの林を眺めながらこの音楽を聞いている。長調で書かれた最も悲しい音楽だろう。

初めて聞いたのは誰の演奏だったか…。それをどうしても思い出せないでいるのだけれど、きっとアマデウス四重奏団だったと思う。
それから随分色々な演奏を聞いてきた。
CD時代に入ってタートライ四重奏団の全集?らしきものが出た時に買って、若干不満を抱いていてところに、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のモノラルの放送録音のセットが出て、よく歌う演奏にある程度は満足していたものの、今ひとつベタベタしていてよくないなぁと思っていたら、ナクソスがコダーイ四重奏団で全集を企画。これは全て買って持っているが、水準の高い演奏で満足していた。
で、10年ほど前だったか、タカーチ四重奏団の演奏に出会い、これをリファレンスとするに至っている。
今も手にはいるのかどうかは知らないが、室内楽のCDはすぐに廃盤になるので、ちょっと自信はない。けれど、この演奏は長く親しんだコダーイ四重奏団の演奏をより緻密にした感じで、ベタベタした情緒によりかかったところもなく、聞いていて清々しい。

追記
このCDにはこの曲の他にも2曲入っている。もちろんこの楽章だけでなく、全ての楽章が素晴らしい演奏である。1988年の録音とあるから、現在のタカーチ四重奏団とはメンバーがいささか異なるようだが、冴えたアンサンブルは昔からであるようで、私はいたく気に入っている。
LONDON/F00L-20450
by Schweizer_Musik | 2008-01-21 07:38 | (新)冬の夜の慰めに…
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