カバスタの指揮した「エロイカ」を聞く
U氏の古めかしい冗談のような演奏(失礼!)に毒気をあてられたので、同じ古めかしい名演を聞いてみようと、カバスタ指揮ミュンヘン・フィルによる1942年頃の「英雄」を聞く。
音は意外にもしっかりしていて驚かされるが、その演奏の真剣さに心揺さぶられる録音である。
カバスタは戦争が終わって、フルトヴェングラーやクラウス、カラヤン、ベームなどとともに戦犯容疑をかけられ、演奏禁止となり、1年後に妻とともに服毒自殺し果てた指揮者である。
ナチスのおぞましい犯罪の数々は、人類の記憶として永遠に語り継がれるべきものと考えるが、こうした戦争勝利国が敗戦国の人々を裁くということが果たして適当だったのか、疑問を禁じ得ないところである。私には戦勝国の傲慢にしか見えないところもある。何故原爆投下や無差別爆撃は裁かれないのか?
まぁ、政治家ではないので、私如きが意見を披露できるものではないが、結果としてメンゲルベルクやカバスタなど親ナチであった芸術家たちの晩年の音楽を、我々は聞くことが出来なくしてしまったことへの後悔がそのまま平和な世界への心からの希求としてあるべきだという程度のものであるが(この辺から私のアメリカ嫌いがはじまっている)。
ともかく、カバスタの戦中の交響曲第3番「エロイカ」を聞きながら、この指揮者の凄さを痛感させられた次第だ。
フルトヴェングラーの演奏と間違えられたドヴォルザークの「新世界」があって、その異様なまでの緊張感に満ちた演奏から、余程ロマンチックな演奏をする人と思っていたら、全く異なる楷書のベートーヴェンでとても気に入った次第である。
ベイヌムがもっと長生きしていたらこんな「エロイカ」を聞かせていたのではないだろうか?フルトヴェングラーと似ているのは、録音の古さぐらいだろう。
終楽章の変奏間の性格の対比もイン・テンポでグイグイ進めながら、見事に描き分けている。録音さえよければと思うが、ミュンヘン・フィルもこの時代、こんな良いアンサンブルをしていたのだと驚くばかりだ。

こういうベートーヴェンが洗練を極めると、クリュイタンスになると思う。しかし、こういう音楽のキャリアを断ち切ったのはカバスタ自身であったのは、大変不幸なことであった。
だから戦争はいけないのだ。こんな果てしない多くの不幸を引き起こすのに見合う「正義」って一体何だろうと思う。怒りと憎しみには果てしがない。出来ればそんなものでなく、もっと美しいもので人の世が繋がっていくように祈りたい…。c0042908_23321663.jpg
さて、続いてドヴォルザークの「新世界」でも聞いてみよう。ナクソス・ミュージック・ライブラリーにあるので、興味がある方は一度ご賞味あれ。そして平和を祈ろう!写真は我が家の近くの林の中で見つけた春の便りである。新しいデジカメを持って、お昼に散歩した時に撮ってきたもの。
by Schweizer_Musik | 2008-03-15 23:33 | ナクソスのHPで聞いた録音
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