金曜日の授業の5限と6限はオーケストレーションの授業であった。その記録をここに。
木管五重奏の編曲について、ボザの木管五重奏のためのスケルツォを課題としてとりあげた。 この作品で注目すべきは、まず声部の移動、受け渡しの技術である。これは冒頭に出て来る。 声部の受け渡しは、この作品のように一拍程度重ねることが多い。最初のフルートのメロディーは2小節目でクラリネットに移る。その際、2小節目の最初の音だけフルートとクラリネットが重なるのだ。 経験の無い者は2小節目の頭の八分音符を書かないでしまうことがあるが、こうすると声部の受け渡しはぎこちなくなり、スムーズに流れなくなる。これは歌ってみればわかる。こんな配慮をせずともコンピューターはきれいに演奏してくれるから、コンピューターのシミュレーションを信じてはならないのだ。 続くスケールも八分音符一個分重ねている点に注目するべきだ。 こんなことをするとそこだけ大きくなってしまうではないかと思うかもしれない。それをディナーミクの指示で補っていることにも注目してほしい。 続いて、フルートのよく響く音域での主題全体の提示が行われるが、この伴奏はクラリネット、ホルン、バスーンの三本の密集和音で支えられている。 木管五重奏はそれぞれに発音原理が異なるため、このように密集でなるべく音と音を近づけてハモらせることが肝要となる。開離の配置では響きがばらけてしまう傾向があるためで、逆にそれが欲しいというのなら別だが、通常はこうして密集にする方がきれいに和音を鳴らすことができる。 ここまで理解したら、ナクソス・ミュージック・ライブラリーにあるベルリン・フィルの木管奏者による録音を聞いてみてほしい。 この密集での配置を五本全部に応用し、経過的なスケールもボザは書いている。 これは、絶対にピアノではできないアンサンブルならではのものである。美しいというだけでなく、アンサンブルの機能を生かした書法に早く慣れてほしいと思う。 これで1時間半ほどの授業を行う。コンデンスは学生諸君が書いたものだが、スコアからこうしてコンデンスを書くことで、スコアを注意深く読む習慣が生まれる。スコアは眺めるものではなく読むべきものなのだ。 オーケストレーション2限目は、実際のアレンジをしてみる。シミュレーションであるが、どう書くか、様々な可能性からどれをどう選ぶかが重要なのだ。 次の楽譜は、イベールの木管五重奏のための3つの小品の第3曲の中間部からとってきたものである。 イベールはこれをクラリネットとホルン、バスーンでアンサンブルにしている。金曜日はこれを学生たちに編曲させた。 ヒントはワルツであるということだけであった。 さて、これを読まれた諸氏はどう編曲することだろう。イベールのアイデアは絶対である。作曲者であるからだ。しかし、我々はもっと自由に考えてもよい。しかし、イベールを超えることができればの話である。 他にもやったのだけれど、これくらいにして、津田さんのリサイタルに出かけることにしよう。 写真は天神山の木漏れ日。今日もすっきりしているとは言い難いものの、晴れである。素晴らしいコンサートを期待しようと思う。
by Schweizer_Musik
| 2008-05-18 11:33
| 授業のための覚え書き
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