プレトニョフの弾くベートーヴェンのバガテルOp.33
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プレトニョフが弾くベートーヴェンの7つのバガテルOp.33。グラモフォンが企画したベートーヴェン全集の第6巻のピアノ・ソナタをのぞく鍵盤作品集におさめられているものを聞いた。
これは私の大好きなベートーヴェンの作品で、冒頭からなんとも言えない優しさと歌を感じるものである。
実は1970年、私が音楽を聞き始めたばかりの頃、ベートーヴェンの生誕200年というアニバーサリー・イヤーがあり、私は手に入れたレコード会社のカタログを眺めて、こんなにたくさんベートーヴェンの曲があるのだと驚き、ため息をついていた…。どこのレコード会社のものだったか思い出せないけれど、多分ドイツ・グラモフォンだったような気がしている。
大体、セット物はとんでもない金額だったので、中学にあがるかどうかという子どもの私にはとてもとても手が出ないものだった。
中に「失われた小銭への怒り "Die Wut über den verlornen Groschen"」という作品が含まれていて」こんなおかしなタイトルの曲もあるのかと友達と笑ったこともある。
と言っても想像するしかなかったのだ。
それらの作品がこのセットに収められている。カシオーリの演奏である。私はたしかヴィルヘルム・ケンプの素晴らしい演奏ではじめてこの曲も聞くことができたのだけれど、新しい全集のための録音もまた素晴らしいものであった。
そうしたことはともかく、この作品33のバガテルの幸せな響きは何だろう。あの交響曲第2番の幸せな響きを思わせる。プレトニョフの録音は良すぎて、ペダルの操作音が若干気になるところがある。やむを得ない演奏ノイズではあるが、マイク・セッティングによってもう少しなんとか出来たのでは…と思う。良い演奏なので惜しいところだ。

プレトニョフは最近は専ら指揮者として忙しいようであるが、もともとはモスクワ音楽院でフリエールに学んだピアニストであり、チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門の優勝者として私にはまず印象づけられたものだから、彼がロシア・ナショナル管弦楽団を自ら創立し、録音をはじめた時は随分驚いたものである。
フェドセーエフの棒で録音したチャイコフスキーの協奏曲全集は、第2番が原典版と名打ったもので興味深い録音だったけれど、第1番の目覚ましい録音は今も強く印象に残っている。
その彼がピアノから少し距離をとっていたけれど、最近、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を録音していて、なかなか良いと評判なので、ちょっと聞いてみたい気がしている。
また話が脱線…。
この録音はプレトニョフのリズム感というか、テンポ感も良さが前面に出ている。おかげで音楽が躍動し、ベートーヴェンの若い溌剌とした感じが良く出ていると思う。シャンドスのジョン・リルによるバガテル全集の演奏と聞き比べてその出来映えは天と地ほども違う。リルも良い演奏なのだけれど、音楽の腰が重いのだ。
プレトニョフはもっと音楽が自由に動き回る。それがただの思いつきでなく音楽の性格をより強調するように上手く演出がされているから、とても聞きやすい。
いや、大したピアニスト、音楽家である。
このセット、1823年に書かれた6つバガテルOp.126だけがウゴルスキの演奏で、ちょっと残念。良いピアニストだけれど、私の好みではないからで、更に言えば、このバガテルが私はとても好きなのだ。プレトニョフでやってくれれば…。
by Schweizer_Musik | 2008-06-21 05:58 | CD試聴記
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