トリスタンとイゾルデの前奏曲と愛の死
c0042908_11502898.jpg先日、ベルクのピアノ・ソナタの和音の分析を授業でやっていた時、そのルーツとしてトリスタン和音について触れて簡単な説明を加え、久しぶりにその前奏曲をちょっとだけだけれど聞いてみたりした。
ゴチャゴチャになっているハード・ディスクの音楽を整理しつつ、トリスタンとイゾルデの第1幕への前奏曲、そして終幕の「愛の死」をカラヤンとベルリン・フィル、そしてジェシー・ノーマンの歌で聞きながら作業をしていて、またまた感動!!
つい、ついでにジェシー・ノーマンがデイヴィスの棒で歌った「ヴェーゼンドンク歌曲」も聞き、チューリッヒ湖に面した丘の上にある白亜の(宮殿のような)邸宅…今は博物館となっている…とその裏手にある、すでに建て替えられて当時とは異なる家(どうも博物館の職員の方が住んでいるとか聞いたけれど…)と、そこからの素晴らしい眺めを思い出していた。
ヴェーゼンドンク夫人の詩についてはどうでも良いのだけれど、この楽劇が、ヴェーゼンドンクとの不倫の中から生まれたことは、この歌曲集からも明らかだ。そしてその何ともフワフワと焦点の定まらない始まり方が、調性の崩壊に向かうエネルギーを集約していく象徴のような存在となったのだから面白いことである。
もちろん、ワーグナーに調性を捨て去ろうなどという考えは全く無かった。しかし、本人の意図はともかく、倚音と第5音を半音下方変異させたドッペル・ドミナントの不思議な響きは、様々な作曲家たちを虜にしたのだった。
いずれにせよ、この作品が無ければ、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」は今のような姿に成り得たかどうか…。
更に、この作品にインスパイアされた作品は、この前にとりあげたハンス・ヴェルナー・ヘンツェの「トリスタン」や、シブラーの「トリスタンの狂気」などをはじめ、いくつも存在することだけでもよくわかる。

さて、カラヤンによる1987年8月ザルツブルク祝祭大劇場でのライブ録音であるこのグラモフォン盤は、あらゆる意味でこの粘着質の音楽の最高の演奏の記録として長く伝えられるべき演奏であると思う。
冒頭のプルトを刈り込んだチェロのユニゾンの美しさ…。どうもかなり細かな配慮をした上での演奏で、1957年録音のEMI盤と随分違っている。録音がよくなったとか、モノラルとステレオの違い以上の何かがここにあるように思う。
1970年代にベルリン・フィルとヴィッカーズやデルネシュなどと録音した全曲盤は残念ながら未聴で(私がLPで所持していた全曲盤のはカール・ベーム盤とカルロス・クライバー盤、そしてフルトヴェングラー盤の3種類である)、この演奏について深く語ることはできないけれど、やはりかけがえのない名演だということだけは確信している次第である。
ともあれ音楽三昧の日曜の朝だった。そろそろお昼にしようか…。
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天神山のタブノキの第2弾…です。
by Schweizer_Musik | 2008-06-22 11:58 | CD試聴記
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