カトリック系の学校にチャペルがあるように、私の通った高校には神社があった。だからと言って、政治的な何かや新興宗教とは全く異なる高校なので、誤解無きよう…。 日本人の宗教心というのは実に自然で、寛容である。お正月には神社へ初詣。お葬式はお寺さんに来て頂き、結婚式は神前(あるいはキリスト教徒でもないのにチャペルで牧師さんに行ってもらったり…)で行う。 これを外国人に話すと、絶対に理解してもらえない…。 クリスマスを盛大に祝う日本人のほとんどは、キリスト教徒ではない。 私たちは四季のある自然の豊かな国に生まれた。だから私たちの心の奥底には八百万の神、自然に生かされている幸せな民族故の信仰がある。だから厳しい自然環境の地で、それと戦わざるを得なかった西洋や中東の民族が一神教を信じるのとは基本的に異なると私は思う。 もちろん私は思想家でもないので、深く突っ込んでこれを語るつもりもない。が、西洋の音楽の多くはこの宗教と深く結びついて存在している。 昨日、散々聞いて感動したマーラーの交響曲第2番「復活」の第4楽章の「原光」は神の光であり、その神の元へと帰る姿と考えて良い。そして第5楽章は「最後の審判の日が近づいた」(マーラー自身の解題より)と震えるような大音響から始まり、やがて天上の聖者たちの歌が人々に「復活」を告げるのだ。 これを意識せずとも音楽は聞けるだろうが、知っていた方がより深く理解できる。特に聖書と結びついたものは聖書そのものを知っているのといないのとでは、かなり違う。 例えば受難曲。大バッハに限らず、数多くの受難曲が作曲されているが、聖書についての知識なしで、それを聞いて感動することは、恐らく無理だろう。朝比奈隆氏はベートーヴェンなどでもこの聖書の理解がないとわからないはずだとおっしゃっていたそうだけれど、それは一理どころか、大変重要なことをおっしゃっていたのではないかと思う。 ならば、仏教的なタイトルをつけたらどうかという案を私に言った者がいた。残念ながらそれは1950年代か60年代に黛敏郎氏から広瀬量平氏に至る中で散々やられてしまった。私の大好きな作曲家である松下真一氏もこうしたテーマで書かれている。 しかし、神道と仏教が同時にあって、全く違和感の無い民族である我々だから、キリスト教もすんなりと受け入れたのかも知れない。また私も海外に出かけ、教会などで感動できるのもそのおかげなのかも知れない。 基本的に寛容で八百万(やおよろず)の神なのだ。宮崎アニメの「もののけ姫」もこうした視点からとらえると面白いと思う。「となりのトトロ」などもそうだ。 いや話かまた脱線してしまった。 我々の持つ宗教性は一体どうなったのか、あるいはどうなるのか…。戦後六十年あまり経ち、アメリカナイズされ続けている我が国で、この一点がとても歪な姿になって来ているように思えてならない。 アメリカが悪いとかそんな問題ではなく、心の問題がなおざりになっているように思えるのだ。 政治の話なんてする気はないし、できるとも思っていないが…私のように素朴な平和主義者でさえ、人の心にある宗教心をもう少し大切にした方が良いと思う今日この頃…。 昼間に歩いていてお社を見たら、ちょっと立ち寄り、頭を下げるのは実に気持ちが良い。ハハハ…何だ、そんな程度のことなのかと、笑われそうだけれど…。 上の写真は心から愛するスイスの村、ミューレンの朝の風景。ラウターブルンネンブライトホルンに朝日が当たったところ…。これが部屋のベランダから見られるのだ…。
by Schweizer_Musik
| 2008-06-29 20:54
| 授業のための覚え書き
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