作曲者 : PROKOFIEV, Sergei 1891-1953 露 曲名 : 子供の組曲「夏の一日 "Letniy den (Summer Day)"」Op.65bis (1941) 演奏者 : レオニード・グリン指揮 タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : Ondine/ODE769-2 このアルバムは こちら もともとは12曲からなる「子供のための音楽」というピアノ作品から7曲を作曲者自ら選んでオーケストレーションを施したものである。それゆえに、プロコフィエフのソ連時代のスタイルともいうべき平易な語法による、親しみやすい音楽となっている。 1940年代のソ連では、極端なスターリンの圧政の下、誰にでも親しまれるものが絶対的な基準となっていたこともあり、かつてのプロコフィエフの先進性は影を潜め、面白さは半減していたと思う。 だからこそ、彼独特の自由な転調、ユニークな節回しが平易なスタイルで聞きやすい音楽として提供される。 それは彼の音楽としては「平凡さ」と表裏一体であり、「朝」など冒頭は幾分平凡かなと思っていたら次第に明けて響きに輝きを増していくあたりは、さすが一流の作曲家の手になるものと思う。ただ、再現というか、はじめの繰り返しはこの作品では不要だったのではないだろうか? 第2曲「鬼ごっこ」は目に浮かぶような描写が微笑ましい。転調、節回しは明らかにプロコフィエフ以外の何者でもない。 第3曲「ワルツ」の和音の設定はプロコフィエフ独特のもので、オクターヴ跳躍を取り入れた節回しは、ちょっと真似したくなるほど魅力的だ。 第4曲「後悔」は息の長いフレージングで、この作品の中では最も深い内容を持っている。非和声音の扱い方が独特で、和音の連結もプロコフィエフ独特なスタイルであることも特筆すべきものである。分散和音が合いの手を入れていくのだけれど、スタッカートでロマンチックに、感傷に流れることを嫌うあたりはいかにも!と思う。 第5曲の「行進曲」はこの曲集の中でも有名なもの。ちょっと「3つのオレンジへの…」に似ているけれど、あれほど強烈な節回しでなく、結構平易なまとまりを聞かせる。ただ、もうちょっと聞きたいなぁ。短すぎると思うのですが…プロコフィエフさん…。 第6曲「夕べ」は第1曲と対になる曲。よく似た動機、メロディーが出て来るけれど、ほとんど2声から3声で出来ていて、見通しの良い音楽。透明な空気の夕暮れの風景。 聞きながら、モスクワの長い夕暮れを思い出していた。あの頃は私も若かった…。 第7曲は「月が牧場に昇る」という曲。一日が終わり、月が出て来るのだ。バルトークの「ハンガリー・スケッチ」にある「トランシルヴァニアの夕暮れ」とともに、夕暮れを描いた作品としては平易にして見事! 今日の窓の外に月はないけれど、こんな曲を聞きながらお月見でもしてみたいものだ。 祝オンディーヌ・レーベル、ナクソス初参戦ということで、これを書いた。一度どうぞ!フィンランド第3の都市であるタンペレは20万ほどの人口の都市。ここを拠点とするタンペレ・フィルってきっと田舎の下手なオケだろうと思っていたら、大間違い。素晴らしい響きにきっと驚くことだろう。 ウィーン・フィルやベルリン・フィルだけが一流ではないのだ。 上の写真は多くの芸術家が愛したシルス・マリアからマロヤ峠に向かうバスの車窓の風景である。アルプスの湖シリーズ第3弾。
by Schweizer_Musik
| 2008-07-14 21:11
| 夏…涼しくして音楽を聞こう
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