曲名 : 交響曲 第5番 嬰ハ短調 (1901-02) 演奏者 : ズビン・メータ指揮 ロスアンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : DECCA/POCL4561 これをyurikamomeさんのご厚意で聞かせていただいた。歴史的名盤と言われているものでも、いくつか抜けていて、このメータのマーラーもその一枚であった。 録音は最新のものと比べても全く遜色のないもので、1970年代のデッカがどれだけの水準にあったのか、よくわかる。 この曲の冒頭のトランペットのソロは、トランペット奏者泣かせの部分であるが、これをこれほど完璧にこなしているのは少ないのではないか?逆に輝かしい響きがマーラーのアイロニーというか、苦さのようなものをあぶり出しているようで、空恐ろしくなる。 この頃のメータは何を聞いてもうっとりさせるような豪華絢爛な響きで、ある意味でオーケストラの頂点にいたのだなぁと思ったりする。ひょっとしたら録音のせいなのかも知れないけれど、多層的なスコアが快刀乱麻、あるべきところに音が全部きちんと納まり、尚、人を感動させるエモーションを持つなんてことは、なかなかに出来ることではないと思う。若いメータがこれをロスでやっていたのだ。いや凄い聞き物だった。バーンスタインやジョン・バルビローリも良いけれど、オケの魅力はこれが今までで一番かな。少なくともこの曲に関しては…。 第1、第2楽章の引き締まった表現は、後のメータからは残念ながら滅多に聞けなくなったものだ。1990年にニューヨーク・フィルと組んでテルデックに録音したものがiTuneStoreにあったので、購入して聞いてみたが、この輝くような響き、引き締まった表現は消えてしまっている。フレーズの処理が若干アバウトというか、緩いのだ。ブレスを大きくとって、スケールは大きくなっているけれど、緊張感は失われている。どうも聞いていて今ひとつしっくり来ない。 ところで、iTuneStoreではこの演奏はロス・フィルとしている。調べてみたが、同じ時期にロス・フィルとマーラーをテルデックに録音していないので、表示が間違っているので気をつけなくてはならない。 第2楽章は特にその感が強く、これだけ聞くと悪い演奏ではないのだけれど、トライアングルの連打が、1977年の録音では警鐘と聞こえたものが、1990年は古い電話のベルに聞こえてしまう。 スケルツォは新しい録音の方がレントラー風の優雅さはあるけれど、17分あまり聞き通すのがちょっと辛くなるほど緩い感じがする。これは旧盤を聞いてしまったからではないだろう。 有名な第4楽章アダージェットは新盤はなんと4分…。聞いていると中間部に入る直前でフェイドアウト!驚くばかりで、STOREにクレームを今いれたところである。 したがって新盤のテルデック盤は購入しない方が良いだろう。演奏が緩いだけでなく、メーカーもいい加減なようだ。しかし、ダウンロードして音楽を聞くことが最近増えている私だが、人間のやることにミスは付きものとは言え、こうしたいい加減なレーベルには本当参ってしまう…。聞く人が少ないからと言っていい加減な作りで売っているとしか思えないようなものが多すぎるように思うが…。 終楽章はそんなことはない(音楽がちゃんと入っていないソフトを売るなどというだらしないメーカーだからちょっと心配したのだけれど)が、やはり旧盤の圧勝だった。 聞きくらべてみたいなどと思ったのが失敗のもと。やれやれであった。 しかし、こんなに人って変わるのだろうか?第1楽章冒頭を聞き比べて、同じ指揮者でもこんなに違うとは信じられない重いである。 しかし、iTuneはクラシック音楽を売る気がないようである。「春に聴くクラシック」なるものが夏の今になってもそのまま…。力が入っていないとしてもこれはあまりにも酷いものだ。メーカーも大きくなって目先の利益しか見えなくなっているようだ。これでは売れるものも売れないだろう。愚かなものである。 いや、また愚痴を書いてしまった。ちょっと愚痴が多いなぁ…反省…。 写真はスイス建国の地、ブルンネンの船着き場でのルツェルン湖の夕暮れである。春まだ浅き日の夕暮れの風景の美しさは息を呑むばかりだった。
by Schweizer_Musik
| 2008-08-09 15:31
| CD試聴記
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