曲名 : ピアノと管楽のための協奏曲 (1924/1930年改訂版) 演奏者 : ニキタ・マガロフ(pf), ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団 このアルバムは こちら はじめに写真のことから…。これはレマン湖畔のモルジュという町にあるストラヴィンスキー通りの写真である。 このモルジュに滞在したのはもう10年も昔のことであるが、ここにストラヴィンスキーが住んでいたとのことで、同じ道を歩き、同じ空気を吸いたいと思い、滞在したものである。 この曲は、モルジュとは関係がないので、恐縮千万なのだけれど、スイス時代から始まった彼の新古典主義への傾倒の産物としてヴァイオリン協奏曲などとともにあげておきたい作品である。 1920年代、ストラヴィンスキーは管楽アンサンブルによる作品を立て続けに発表しているが、その中でも極めて充実した作品だと私は考えている。 昔、大学の卒業作品として吹奏楽とピアノのための協奏曲を書いた時、スコアを一生懸命調べたのは、懐かしい想い出だ。この時はまだドビュッシーやイベールに傾倒していたので、あまり影響は受けなかったけれど…。 書かれたのは、フランスのスペインに近い大西洋岸のピアリッツというところである。 表記の1930年改訂というのは、この盤の説明であちこちに書かれているが、1950年に改訂されたことは私も承知しているけれど、1930年というのはどこを調べても出てこない。一体どういうところから1930年版というのが出てきたのか、メーカーにはぜひ説明をしてほしいものである。 曲はかなり明確な形式で書かれていて、強固なまとまりを感じさせる作品だ。 第1楽章は重々しい序奏と軽快なテーマによる2つの部分からなる主部、そしてコーダから成っている。主部はドメニコ・スカルラッティのソナタなどの軽妙さにどこか通じるものがある。 付点リズムが印象的な序奏と、軽快な主部とはまるでバッハの管弦楽組曲の序曲のようではないか?ちょっとフォルテで驚かして主部に入るけれど、音楽はリディアなどのモードを多調性の中で使いつつ、全体をポリフォニックに書いていて、新古典主義の典型をなしている。なんとも楽しい音楽!近代音楽にアレルギーのある方に無理に薦めないけれど、ウキウキしてくるこの音楽、ストラヴィンスキーは余程受けを狙っているように思うのだけれど…どうだろう? 第2楽章は大体5つの部分に分けられるものの、中間にあるPiu mossoの速い部分を除けば、バロック組曲などでよく聞かれるエアであり、ブランデンブルク協奏曲などの緩徐楽章にどこか似て無くもない。 ちょっとした不協和があちこちに潜んでいて、微妙な刺激を持続させる。この微妙な刺激もまた新古典主義の特徴では…。プルチネッラを原作を知って聞く、ちょっとした微妙な刺激を思い出す。 カデンツァのロマンチックな表現がこれに対応し、この楽章の特徴を成している。 第3楽章は第2楽章からアタッカが続けて演奏されるが、急き立てるような音楽に、ちょっとしたフガートが挟まっていたりして、ストラヴィンスキーのしたたかな計算があちらこちらに見え隠れしている。コーダで第1楽章の序奏を回想したりして、全体をまとめようという意志が強く、またそれがとても効果的でストラヴィンスキーの面目躍如たるオーケストレーションと合わせて素晴らしいものだと思う。 演奏はニキタ・マガロフのピアノ、近代音楽を得意としたギュンター・ヴァントが手兵の北ドイツ放送交響楽団と組んでの演奏。これが名演にならないわけがない。マガロフにはエルネスト・アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団と組んだ録音があるけれど、あの演奏はちょっと一本調子に感じられるところがあったけれど、このヴァントと組んだ録音ではオケの響きが良いこともあり、随分良い。お薦めである。 ちなみにカップリングはフォルトナーの交響曲とツィンマーマンの1楽章の交響曲、そしてリゲティのロンターノである。ロンターノはとんでもない名演!である。 最後に花が彩るストラヴィンスキー通りとレマン湖の写真をもう一枚どうぞ…。
by Schweizer_Musik
| 2008-08-11 18:45
| ナクソスのHPで聞いた録音
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