曲名 : 戦争レクイエム Op.66 (1960-61) 演奏者 : リチャード・ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団,合唱団, セント・ポール大聖堂聖歌隊, ロデリック・エルムス(org), ヘーザ-・ハーパー(sop), フィリップ・ラングリッジ(ten), ジョン・シャーリー=カーク(br) CD番号 : CHANDOS/CHAN8983-84 このアルバムは こちら 終戦記念日に聞く音楽、第3弾。どうしてもこれを外しておくには心が痛むので…。ベンジャミン・ブリテンの他の曲を何も書かず、ただこの曲だけを残したとしても、おそらく彼の名前は不滅であっただろう。 オーウェンの詩の一節をブリテンはスコアの冒頭に引用している。 「私の主題は戦争であり、戦争の悲しみである。詩はその悲しみの中にある。詩人の為しうる全てとは、警告を与えることにある。」と…。 ウィルフレッド・エドワード・ソールター・オーエン(長い名前!)は、死すべき定めの若者のための賛歌などの詩で知られるイギリスの詩人で、25才の若さで第一次世界大戦で戦死した。 彼は、1918年、休戦発効の一週間前のサンブルの戦いで戦死したのだった。 その彼が書いた戦争の詩を使い、1960年から1961にかけて書かれたこの作品は、1940年のナチス・ドイツによるイギリス空爆によって破壊されたウォリックシャー(イギリス中部)の町コヴェントリーにある聖マイケル教会の聖堂の献堂式のために書かれたのだった。 そして、1962年5月30日に予定通りこの献堂式で初演された。 初演のソプラノとしてムスティスラフ・ロストロポーヴィッチの夫人のガリーナ・ヴィシネフスカヤが予定されていたが、ソ連当局の急な出国停止により間に合わず、この初演の時はヘルタ・テッパーが出演したという。 反戦平和主義者だったブリテンが、この作品で描いた戦争の悲劇と反戦のメッセージは今も強いインパクトを持っている。テノールによって歌われるオーウェンの詩は、ミサの典礼文を歌うソプラノと合唱と一体化し、この極めて特殊なレクイエムを20世紀に書かれた音楽作品の屈指の名作と成している。 ブリテン自身の指揮によって、初演にソ連当局の邪魔によって間に合わなかったガリーナ・ヴィシネフスカヤも参加した演奏がCD化されている。確か第一回のレコードアカデミー賞の大賞がこのレコードで、1970年頃から本格的にレコードわ聞き始めた私などは常に手が出ない高嶺の花だった…。 で、その歴史的名盤は、私如きがあーだ、こーだと書いても仕方がないので、最近聞いた中で最も目覚ましい名演ということで、ヒコックスの1991年2月の録音(何が最近だ!)を紹介しておこう。ナクソスで聞くことができるこの演奏は、この曲の演奏史でも特筆すべき名演だと私は確信する。 さて、愚かにも大国のエゴイズムをむき出しにして、今日も戦争をしているどこかの国の指導者たちに聞かせるには、こんなに相応しい音楽はない。領土を戦争をして拡大したりするのに、どんな理論武装してもたかが「盗人にも三分の理…」程度の理しかないのだ…。 また、戦争を美化したりする愚かな者に、ぜひ聞かせたい音楽でもある。 私はどんな紛争でも戦争には反対だ。音楽は平和でなくては存在できない。そんな音楽に携わる者として、戦争を肯定することは、自分の存在そのものを否定することだと思っている。 写真はフィンデルンの村からみたマッターホルン(の裾野…)である。いつもきれいに見られるわけではないけれど、このほとんど写っていないマッターホルンの写真。私は意外と気に入っている。 でもこれだけでは、マッターホルンとは思ってもらえないかも知れないので、ゴルナーグラート鉄道で登ったところのリッフェルゼーから見るマッターホルンもどうぞ…。ちょっと涼しいでしょ?
by Schweizer_Musik
| 2008-08-15 20:54
| 夏…涼しくして音楽を聞こう
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