2005年 05月 19日 ( 2 )
松下真一のシンフォニア・サンガを聞く
c0042908_15145735.jpgレコード・プレーヤーを買ってコンピューターに取り込みながら、昔のレコードを次々を聞き、感慨にふける。
松下真一のシンフォニア・サンガのレコードは、私が大学四年の時に買ったもので、ひたすら懐かしく、初めて聞いた時の感動が思い出された。
前衛的な作曲法で知っていた松下真一氏の声楽作品が東洋の仏教を基盤として書かれたことにまず驚き、意外なほど平易な語法で書かれたその作品は、私の心をとらえてはなさなかった。余白に入っていたフレスク・ソノールの厳しい響きに対して、シンフォニア・サンガは、おおらかそのものに聞こえた。
今、聞き返してみて、その時に思ったことがそのまま思い出された次第である。その松下真一氏も世を去られてもう十五年にならんとしている。なんとしたことだろう。
秋山和慶氏の指揮の見事なこと!!こうした名盤がもう一度CDになって出てこないものだろうか・・・。
by Schweizer_Musik | 2005-05-19 15:13 | 原稿書きの合間に
ランドスケープ/ロータス・カルテット *****(特薦)
ロータス・カルテットというヨーロッパでデビューしたという女性四人の弦楽四重奏のCDを聞いた。二十世紀に書かれた邦人作品が五曲収められている。
一曲目の矢代秋雄の弦楽四重奏を聞いて、かつて厳本真理弦楽四重奏団で何度となく聞いた印象を一新する解釈で驚かされた。当然若い彼らがこの作品を厳本真理のように演奏しなくてはならない理由はないが、かつて矢代秋雄氏がヨーロッパ留学中に妹の訃報に接して書いたこの曲を(矢代秋雄氏はこのことについてその後触れていないが、最初は亡き妹に捧げると書かれていたそうだ)古典的なフォルムに磨き上げたこの若い団体の演奏よりも、多少のんびりはしていても、ミステリアスな響きを大切にした古い厳本真理の録音に私はまだ惹かれ続けていることを告白しなくてはならない。
しかし、アンサンブルの素晴らしさはどうだろう。妙齢の美しき四人の女性(でなくてはならない理由は全くないが、それが売りなの?)の技術は第一級であることはまちがいない。
矢代秋雄氏のこの作品は、二十世紀に書かれた我が国の弦楽四重奏曲の中でも最もヨーロッパ的で、アカデミックな伝統に従って書かれたものである。冒頭のエスプレシーヴォの動機がフランクのように循環主題となって、全体を統一するイデーとなっているのだが、厳本真理はこれを深い哀悼の心がこもっているように感じられる。ロータスの面々の演奏はここからすっきりとしたフォームを刻みだしている。音楽に音楽以外の概念を持ち込むことを極度に嫌った矢代秋雄氏はこのロータス・カルテットの演奏に満足するのではないだろうか。
続いて演奏される西村朗氏の弦楽四重奏曲第2番「光の波」は二部からなる作品。アルデッティ四重奏団の演奏は私は聞いていないが、この音楽にのめり込んだような強い集中力による演奏からは強い感銘を受けた。前衛的な語法によるとは言え、極めて東洋的な響きをも感じさせるそれは、第2部のパルス的表現の中からも感じられる。聞きながら、弦とは全く違う、竹林に差し込む光のようなものを私は思った。これも迫力満点の彼女たちの演奏があってのことだ。
同じ年に書かれた細川俊夫氏のランドスケープもまた、我が国の二十世紀を代表する名作の一つだ。弦の奏法、書法について熟知し、かつ新たな表現、響きを求め続ける細川俊夫氏の執念のようなものがこの作品にある。が、私はこの作品は音の出ていない空間(時間)と多彩に変化するサウンドの時間(空間)との対比が、広大なランドスケープ(風景)になっているのだと思う。沈黙は破られ、響きは沈黙に吸い込まれていく。私のこの曲を聞いて感じた世界は細川俊夫氏の意図したものかどうかは知らないが、13分あまりの間、息もつかせぬ世界を作り上げた作曲者と、そして凄まじいまでの集中力で描ききったロータス・カルテットの面々にただただ感謝をささげたい。得難い時間であった。
つづいて二十世紀の我が国を代表する作曲家のひとり武満徹の同じ曲名の「ランドスケープ」が演奏される。1961年に作曲されたというこの作品は、今持って全く新しい。まだノーヴェンバー・ステップを書く前の武満であるが、この弦楽四重奏はあまり演奏されてこなかったのではないだろうか。5度の響きを連ねたこの作品を聞きながら、ひどく日本的なものがあるように感じられた。それは細川俊夫氏の作品でも思ったのだが、沈黙(間)が大変饒舌であることだ。(しかし細川俊夫氏と武満徹のそれは、全く違う世界にあるのは言うまでもない。更に念のために述べておくが、どちらが優れているかなどというアホらしい議論とも無縁の話だ)
三善晃氏の弦楽四重奏曲第3番も1992年の作品だ。彼の第1番や第2番の弦楽四重奏と違い、単一楽章の5分あまりの小品である点が特徴であるが、それは、大阪室内楽コンクールの課題曲として、自作のギターと弦楽四重奏のための作品から編曲されたという事情によっているのだろう。
三善晃氏らしい節回しの曲。ロータス・カルテットの演奏も全く見事としか言いようがないが、彼の作品としては私は少々物足りない気がしている。
ソリストとしてではなく、弦楽四重奏をやりたいと渡欧した彼女たちの演奏は、どれも全く見事だ。現代音楽アレルギーのある人に無理に薦めようとは思わないが、それほどではないと思われる方はぜひ一聴をお薦めしたい。

TELDEC/WPCS-10426
by Schweizer_Musik | 2005-05-19 12:39 | CD試聴記