2009年 06月 15日 ( 1 )
音楽時事つれづれ…
先日、黒田恭一氏が亡くなられた。私も忙しかったので、一週間と思っていたらもう2週間も経っていたことに驚く。光陰矢のごとし…(ちょっと使い方が違うな…)黒田氏は吉田秀和氏などと同世代で、オーチャード・ホールのプロデューサーとしても知られる音楽評論家である。
名曲中の名曲を世紀の名演で聞こうという態度ではなく、広く音楽を人々に聞いてもらおうというスタイルの評論は私のようなものが書くのも申し訳ないが、大変好い印象で読んでいた。だから彼がフルトヴェングラーやカラヤンなどを語るのは、とてもわかりやすいものだった。
レコ芸の評論も穏やかな筆致で、個性的な演奏を紹介するというより、万人に受け入れられる優れた演奏に軸足を置いたもので、本当に良い評論家だったと思う。心からご冥福をお祈りしたい。

さて、今朝も、テレビで辻井氏がピアノを弾いている。メジャーとなって、某音楽事務所のあざとい売り出しが私は気になる。
毎日テレビに露出し、知らない人は世の中にピアニストって彼しか、あるいは彼の先生として露出する横山幸雄氏くらいしかいないと思っている人も多いのではないだろうか?
それでもこれがきっかけとなって絶滅危惧種のクラシック音楽に関心を持つ人が一人でも増えてくれたならそれで良いとすべきかも知れない。
でも、クライバーン・コンクールの優勝者ってどんな人がいるの?と気になって調べてみた。(嫌みなやつですねぇ…)
Wikiに書いてあったのは以下の人たちであった。

* ラルフ・ヴォダペク(1962)
* ラドゥ・ルプー(1966)
* クリスティーナ・オルティーズ(1969)
* ウラディミール・ヴィアルド(1973)
* スティーヴン・デ・ グローテ(1977)
* アンドレ=ミシェル・シューブ(1981)
* ホセ・フェガーリ(1985)
* アレクセイ・スルタノフ(1989)
* シモーネ・ペドローニ(1993)
* ジョン・ナカマツ(1997)
* スタニスラフ・ユデニチ、オルガ・ケルン(2001)
* アレクサンダー・コブリン(2005)
* 辻井伸行、チャン・ハオチェン(2009)

申し訳ないが、ラドゥ・ルプーとオルティーズ以外は大ピアニストというほどでもなさそうだ。知っている、もしくは聞いたことがあるという程度なら アレクセイ・スルタノフとシモーネ・ペドローニ、ジョン・ナカマツが入るけれど、これで世界一のコンクールと称するのはちと無理がある。
こうしてみるとショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールが色々あるにしてもいかにレベルが高いかよくわかるし、マスコミの不勉強を本気でいさめたくなる。
まっ、辻井氏の才能と可能性について、私も異論はない。様々な経験をこれから更にしていって欲しいとも思うし、大ピアニストに成長していって欲しい。が、タレントとして引っ張り回したあげく、若くして引退同然となったクライバーンの悲劇を忘れないでほしいのだ。
某音楽事務所は何十年と活動していく演奏家としての辻井氏を育てる展望をもってほしいと思う。
ラドゥ・ルプーのように、コンサートを全てキャンセルして勉強のために音楽院に戻らせるくらいの覚悟をしたらどうか。とも思う。ラドゥ・ルプーはリーズで再び優勝して演奏家としての活動に入ったのだった。
ああ、目先の利益がまず大切!なのかなぁ…。チャイコフスキー・コンクールで優勝した日本人もこれほどの扱いを受けた人はいないだろう。
何ヶ月か前になるが、彼のCDを聞いたとき、可能性は感じたが、こんなに大騒ぎをするほどとは思わなかった。そしてその意見は今も変わらない。もっと勉強させてあげるべきだと私は思う。

そんな中、ショパン・コンクールで日本人としては最高位の二位となった内田光子さん(彼女は不思議と一位が少ないが、コンクール荒らしとして有名だった)がDBEに叙された。大変名誉な話で、彼女の演奏家としての素晴らしさを再認識させられた。
彼女のモーツァルトのソナタを聞きながらこれを書いているのだが、調律にまでこだわったというその演奏は、まさに世紀の名演。
彼女の半世紀にわたる活躍のすごさに圧倒されそうになる。まっ、強力な音楽事務所の圧力もないので、日本の情報番組にそういった情報が流れることはない。
ずいぶん不公平だなと思うのは、我々のようなどうでも良い人間たちだけだろうが…(笑)

若い辻井君が内田光子氏のように育っていくかどうかはこれからの問題である。私はそうなるとかならないとか、占いのような話をここに書く気は全くない。
でも、そうなるように、辻井氏には一層の研鑽を積んで欲しいし、マネジメントは売りだしに躍起になるのではなく、長い目で彼の演奏活動を考えるようにしてほしい。更に彼に作曲させようなどと思わないように。シンガーソングライターを育てるのではあるまいし…。
自作自演が悪いなどと言っているのではない。その内容が駄目と言っているのである。もうプロデューサーの不勉強ぶりが露わになっただけの噴飯ものだった。
さて、そろそろ通院の時間である。今日は時間がかかる予定…。明日からは再び授業がはじまる。
by Schweizer_Musik | 2009-06-15 08:35 | 日々の出来事