曲名 : バレエ組曲「ロメオとジュリエット」抜粋 演奏者 : エサ=ペッカ・サロネン指揮 ロスアンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : Grammophon/477 7326 この曲は、プロコフィエフの最高傑作だと思う。しかしこの曲は、様々な受難を受けて今日の姿となっている。すなわち、バレエ版と3つの組曲版、そしてピアノ組曲版の5つの形になっているのである。 もともとは、レニングラード・バレエ学校創立200年祭のために書かれた作品であったが、ボリショイ劇場が割り込んできて、プロコフィエフと契約して「ロメオとジュリエット」が書かれることとなった。1935年に全曲(52曲)のスコアが完成し、練習に入ったところで、ダンサーから「踊れない」との苦情が入り、結局ボリショイ劇場との契約は破棄されてしまい、この労作は宙に浮いてしまうことになった。 また、原作と異なり、ハッピーエンドに変えた筋立て(ロメオが、ジュリエットがまだ生きている間に墓場に到着)も、当時の文化人の間で物議を醸したそうだ。これは当時の「国」からの要請でもあったと言われている。 しかし、宙に浮いてしまった作品から、プロコフィエフは管弦楽用の組曲を作った。 全曲の完成の翌年にまず第1組曲が、そして1937年には第2組曲が完成。さらに、ロメオとジュリエットからの10の小品というピアノ編曲版が同年に作曲者自身によって初演されている。 そして、モスクワでの初演につまずいたバレエ版は、1938年にチェコのブルノで初演され、これが大成功をおさめ、1940年にレニングラード(今日のサンクトペテルブルク)のキーロフ劇場で凱旋公演を行い、大成功を収める。このとき、すでに結末は原作通りの悲劇となっていたそうだが、この成功を見たソビエト第1のボリショイ劇場での公演も行われることとなるのだが、ダンサーが音を聞き取れないなどの理由をつけて、プロコフィエフのスコアをボリショイ劇場は団の打楽器奏者によるオーケストレーションの「改変」をしてしまったのだった。 結局、作品が出来て11年後の1946年に、管弦楽のための第3組曲をプロコフィエフは作ったのも、こうした事態への抵抗もあったのではないかと、私は推察するのだが…。 ともかく、これにより、1980年代半ばまで、この凡庸なスコアでの全曲版が演奏されていたとは、お墓の中で、プロコフィエフは地団駄踏んでいたのではないだろうか?
さて、エサ=ペッカ・サロネンのこの録音は、組曲版をバレエの筋に合わせて構成したもので、スッキリした響きに安心して身を任せられる名演だと考える。ロスアンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は申し分なく、ライブの傷もほとんどなく、大変良いロメジュリだった。 #
by Schweizer_Musik
| 2020-06-29 09:39
| CD試聴記
曲名 : 子供の夢 "Rêve d'Enfant" Op.14 (1902) 演奏者 : アルチュール・グリュミオー(vn), ディノラ・ヴァルシ(pf) CD番号 : PHILIPS/PHCP-9653 この曲は、好きな曲…というか、聞くと無条件で坊田の涙を禁じ得ない…(ちと大げさ…)曲。その意味では、リストの「ヴァーレンシュタットにて」と似ている。 我が子のために書いたそうだけれど、私の二人の子供も母親となり、私たち夫婦は子育てを卒業してしまったけれど、子供を愛し育てるのは苦労もあるけれど、やはり素晴らしく幸せなことだと思う。 もう一度(子育てを)したいとは、決して思わないけれど(笑)、熱が出たと言って、夜中に小児科へ負ぶって連れて行ったことなど、大変だったけれど、それがあって今の子供たちがいるのだと思えば、あれもまた子供からもらった幸せだったのだと思う。 この平易で、なんとも伸びやかなメロディーを、子守歌のように同じ音型を繰り返し続ける伴奏(それは舟歌のようでもある)に乗って、変イ長調のヴァイオリンとしては少し鳴りにくい調で、デリケート極まりないピアノの伴奏(そのほとんどはピアニシモ!!)にのり、優しいまなざしを子供に送り続けるイザイの眼差しを感じる。 イザイの系列だから上手いとかいうのではないが、やはりアルチュール・グリュミオーがこの曲の録音を残してくれたことを、感謝しないわけにはいかない。 イザイ自身の録音も1912年のアコースティック録音ながら良好な音で復刻されているし(Symposium Records/SYMP1045)その絶妙な世界を味わってもなお、この録音の価値は下がることはないと思う。 ウジェーヌ・イザイの自作自演とこの録音は、この曲の決定版かなぁ〜。 #
by Schweizer_Musik
| 2020-05-28 04:42
| CD試聴記
作曲者 : LISZT, Franz 1811-1886 ハンガリー 曲名 : 荘厳ミサ曲 S.9/R.484 (1858) 演奏者 : デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮 フランス国立放送管弦楽団, 合唱団他 CD番号 : Apple musicにて試聴 収録日はわかるのですが、細かな出演者、独唱者などは探したのだけれど判明せず。しかし、なかなか良い演奏だし、録音も良いのでありがたいことと思う。 曲も、かなりマイナーなものも多く、このリストの荘厳ミサ曲もまた素晴らしい作品でありながら、マイナーな作品で有り続けているが、こうした名演が復刻されるのは、とても良いことだと思う。 独唱者の名前はわからないが、まずは優れた歌唱であると思う。 #
by Schweizer_Musik
| 2020-05-24 17:19
| CD試聴記
曲名 : 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107 (1885/ノヴァーク版 : 1954) 演奏者 : アラン・ギルバート指揮 NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : SONY-Classical/SICC 30515 かつて、北ドイツ放送交響楽団と呼んでいたオーケストラが2017年に名称を変更し、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団となり、ニューヨーク・フィルハーモニックを退任したアラン・ギルバートが首席指揮者となっている。 この録音は2017年、ハンブルク、ハーフェンシティに新築なったエルプフィルハーモニー・ハンブルクで2019年6月25〜27日に録音されたもの。 かつて、シュミット=イッセルシュテットやギュンター・ヴァントが率いていたオーケストラ。ブルックナーの演奏に素晴らしい相性を示すのは当然かも知れないが、この演奏の見事さはどうだろう。 ギルバートは、こうした大物にとても相性の良い指揮者だと思う。しかし、第7番の演奏で、ヴァントならばきっとハース版を使っていただろうけれど、ギルバートはノヴァーク版を使っている。あまり版にこだわる人間ではないつもりだけれど、第2楽章での打楽器の使用で、やはりかなり派手な響きがするので、そのあたりが好みの分かれるところかも知れないが、それもキンキラキンの音は押さえて、重心の低い音となっているのはさすがだ。 更に、この長いフレーズを深い呼吸でタップリと聞かせたと思えば、スケルツォの弾むようなリズム感の素晴らしさ!!私にとって、この曲の、しばらくぶりの大名演だった。それがこの日系アメリカ人の指揮者とドイツのオーケストラとで生まれたのは、世代交替を強く印象づけることとなったように思う。 #
by Schweizer_Musik
| 2020-05-21 17:51
| CD試聴記
曲名 : 交響曲 第9番 (1909) 演奏者 : アラン・ギルバート指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック CD番号 : New York Philharmonic/NYP20120104 アラン・ギルバートには、2008年にロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してセッションで録音したものがあるのだけれど、2012年2月17日に行われた公演の全て(トーマス・アデスの傑作「ポラリス」と、このマーラーの第9)が収められたこの演奏の方が、私個人としては生き生きとしていて良いと思う。 例によってApple musicによって聞いたのだけれど、実演故のノイズやら傷はあるものの、音楽がよく呼吸し、実に繊細でダイナミックな名演となっている。 二年ほど前、彼はこのニューヨーク・フィルのシェフからかつて北ドイツ放送交響楽団と呼ばれていた、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団のシェフとなっている。最近、彼が新しい手兵と録音したブルックナーの交響曲第7番を聞いて、大変感銘を受けたが、こうした大物とギルバートは特に相性が良いように思う。 ニールセンの交響曲全集が正規録音としてあるが、あれも良さそうだなぁ〜。 #
by Schweizer_Musik
| 2020-05-21 03:03
| CD試聴記
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